第5章 頑張って我慢して?
「………薫っ」
「どーした?そんな慌てて。そんなにご飯行きたかった?」
薫に課題終了の連絡してすぐ、階段を駆け下りて。
勢い良く玄関を開ければ。
同じように隣の玄関が、開いた。
「………」
「ん?」
行きたいよ。
薫だもん。
薫と一緒なんだもん。
どこにだって行きたいに決まってる。
「お腹、すいたんだもん」
隣の玄関へと足を伸ばし、薫のパーカーを掴めば。
優しく破顔したままに、前髪にふわっと掌が触れた。
「頑張ったもんな」
「ぇ」
「課題」
「………うん」
「おばさんには言ってきた?」
「…………言ってきた」
「おいで、真白」
掌が触れて、右手に絡まる。
…………暖かい、はずなのに。
薫の掌は驚くくらいに冷たかった。