第3章 気持ちいいって言ったら許してあげる
「すっごー、やば。ラブホテルって実は初めてなんだよねぇ、僕」
「は?」
「ん?」
「そんなの信じるわけないじゃん」
「なんで?こーゆーとこ入るのも、するのも初めてだよー?」
「はぁ?」
「なんなの真白、何その顔、怒った顔もかわいーけどさ」
いつもみたいな少年の霊体じゃないから、足はきちんと床にくっついてる。
なのにあたしよりも全然背丈がおっきいから、わざわざ見上げなきゃいけない事実が腹立つ。
しかもにこりと頭ぽんぽん、なんてされた日には。
子供に子供扱いされる覚え、ほんっとないんだってば。
ぶんっ、て、思い切り払いのけた掌は、いとも簡単に交わされるし。
イライラする。
交わり、つまり先ほどの、きす、で。
あたしだけじゃなくて彼にもエネルギーを与えちゃうなんて、厄介きまわりないったら。
実体。
つまりまわりの人間にも見えるようになるらしく、こんなところ入るとこ誰かに見られたら、とか思うだけでこっちはヒヤヒヤもんなのに。
全く。
ほんと厄介なのに関わっちゃったなぁ。
ここはちゃんと今後のために牽制、って必要よね。
うん。
「あのさ」
「だって僕、12歳で車に轢かれちゃったから……」
意を決して口を開いたあたしの言葉は、しゅん、としながら項垂れる彼の言葉に見事に砕かれた。
「………」
「だからこんな風に女の子に触れるのも、初めてなんだもん」
「………」
うう……。
「あの歩道から出ることもずっとなかったし、なんか嬉しくて…。婚約者いるんだもん、困るよねやっぱり……」
「………」
「…………」
見た目は高校生、でも。
中身は、そっか、12歳。
12歳ならたぶん、経験だってないのかもしれない。
「………ぇ、と、あの、さ?」
「なーんちゃって」
「え」
あ、あれ?
トン、て。
肩を押されるままに倒れ込んだ先は、ボフン、て、柔らかなベッドの上。
「ぇ、え!?」
そのままあたしの上に跨がるように覆い被されば。
いつものように意地悪に瞳を細めた彼が、上にいた。
「………チョロいね、真白」
ついでにペロリと、唇から舌を覗かせて。
「!!」
騙された!!