第1章 最初の1歩を踏み出して
「七海ちゃん、わたしむりだよ~~~……」
「ひなはそういうとこあるの、私が1番知ってて言ってるの!そろそろ踏み出さなきゃだめでしょ?」
もう高校生なんだから、と七海ちゃんは言う。
自己紹介。新しいクラスになったら当然行われるイベントに、わたしは勇気を出せないでいた。
「私、向日七海といいます。こっちは友達の…じゃなかった、親友の!」
ほら、ひなも自己紹介!と七海ちゃんに急かされる。ううう、やらなきゃだめかな……
「…美園ひな、です。よろしくお願いします……」
絶対に『元気な子』とは映らないような小さい声で自己紹介を済ますと、わたしはささっと自分の席へ戻った。偶然にも隣の席は七海ちゃんだったから、席に戻っても話は続く。
「も~!なにあの自己紹介!」
「だって~…緊張するんだもん…」
「ひなはもっと自信持っていいんだよ?」
かわいいんだから、と七海ちゃんは付け足す。かわいい、と言われても…自分ではあまり思わない。
「彼氏、いたことあるじゃん」
「でも、あの人はあんまりいい彼氏とはいえなかったし…もしかしたらわたしを見る目がなかっただけなのかも……」
「そんなことないよ!ひなは可愛い。親友の私が保証する」
え~…とわたしがごにょごにょしていると、自己紹介の番は次の人に回っていた。