第18章 怖さ
「良かった。会えた。今少し、時間もらえないかな?」
他の学校の制服着てるかわいい女の子。
「見てわかんない?連れがいるから。今は…」
「私なら大丈夫だよ、もう一人で帰れるから。また明日ね。これ、ごちそうさまでした。」
顔真っ赤にして、モジモジしてる。
この子、御幸くんに告白するつもりなのかもしれない。
「ちょ、舞ちゃん!」
胸の奥がチクリと傷んだ…
なんで?
女子寮が見えてきた所で、舞ちゃんと呼んで、御幸くんが追いかけてきた。
「へ?あの子は?」
「どう考えても非常識。舞ちゃんと一緒にいるのに、それに大会中だし、そんな余裕ねぇよ。」
「振ったの?かなりかわいい子だったじゃない?」
「ああいう化粧濃くて、香水の匂いプンプンさせてるいかにもって感じの子無理だわ。」
爪も髪も綺麗に手入れされてて、たぶん同い年なのにお化粧もバッチリ。とても同い年には見えなかった。
私は日焼け止めとリップクリームとまつ毛をあげるくらいしかしてない。
どうせ汗で落ちちゃうし。
爪もピッチャーやってたときの癖で短い。
あの子は私と正反対でキラキラしてたのに…
御幸くんのタイプってどんな子なの?
「ダークホースの薬師打線をどう抑えようかって必死に考えてるのに、俺のこと好きだって言うなら、状況考えてほしいと思わん?大事な試合前だって。」
確かに今が一番大事な時期。
「ごめんね、明日試合なのに、送ってもらって…」
「おいおい、違うからな?誤解すんなよ?送って来たのは、買いたいものがあったからで…それに…」
「それに?」
そこまで言って御幸くんは黙った。
ん?と俯き加減の顔を除きに行く。
「見んなって」
右手で顔を覆って左手は私の肩にある。
「ん?」
御幸くんが被っていた帽子を被せられた。
目深に。帽子の鍔で前が全く見えない。
「舞ちゃんと話すと気持ちが落ち着くから。試合前だから余計に舞ちゃんに会いたくなった。
そんだけ。じゃ、俺、帰るわ」
被せた帽子の上からグリグリと頭を撫でて、帽子をそのままにして御幸くんは帰っていった。