第18章 怖さ

薬師戦。

御幸くんはすごく集中してるように感じた。
丁寧に入ったはずなのに、フェンス直撃の2ベースを打たれて、あっという間の1失点。

高めのストレートに的を絞られて、早々にマウンドに集った。
でも、雰囲気は悪くない。
亮介先輩の手刀や倉持くんのキックを相次いで食らってたけど、大丈夫。
守備を信じて投げてほしい。
御幸くんがこのまま黙ってないんだから。絶対！！

向こうの投手。真田俊平が出てくる前に、逆転して引き離しておいてほしい。


1塁のランナーが走った。
ワンバンしそうな低めの変化球。
御幸くんは逆シングルで投げる体勢を作って刺す。

「やった！刺した！！」

「舞と御幸、あれ死ぬほど練習してたもんね。」

わざと変化球をワンバンに投げてそこからの送球練習、春からめちゃくちゃやってた。
私より遥かにスピードがある降谷くんの変化球でやってのけちゃう御幸くんてほんとすごい。

「付き合う舞もさすが！舞も褒め称えてもらえ！」

それを聞いたゾノくんとかナベちゃんとかにメガホンでポカポカやられた。


青道の攻撃は、理想の形で一点返した。
倉持くんが出塁、盗塁。
亮介先輩が送って、純先輩がお返しのフェンス直撃タイムリー。
哲先輩のあたりはサードライナー。

「くぅーー強烈…あれが抜けていれば」
「サードの子、ビビってたね」

ウガ先輩は勝ち越し2ラン。

つくづく味方で良かったと思う打線だ。全く気が抜けないもんなぁ。

御幸くんはというと…

打つ気満々なのは伝わってくるけど、ピッチャーゴロ。

「マネージャー！あのランナーいないと撃てへんのどうにかしてやってくれや」

「えぇー私？！」

「あのムラっ気どうにかなんねぇの？」

ランナーいると集中力すごいんだけどなぁ…

投球だけじゃなく打席でも降谷くんは気合いが入っていた。
自分が取られた点は自分で取り返す。

塁を回っている降谷くんが大きく見える。



打者が一巡した所でピッチャー交代。
沢村くんがマウンドに上がる。

第一球、ストライク。
あ、でも今のはマズイ…。
御幸くんの構えた所と違う。全力の返球が御幸くんの怒りを表していた。