第17章 声援
監督の胸元にフォーシームを投げ込んだ。
「うわぁ…プレッシャー半端ないのによく投げ込んだね。」
「あの気持ちの強さは沢村の武器になる。
つうか、舞ちゃんまた遅くまで残ってる、明日試合!
朝も早えんだし、帰ろう」
「あー、うん。」
もうちょっと御幸くんと話していたかったな。
彼と話していればこのモヤモヤが取れる気がした。
でも、明日も試合だ。
御幸くんに迷惑かけちゃダメ。
「おやすみ。」
「おやすみ。」
そうだ、こんなことしてる場合じゃない。
明日、明川戦。応援頑張らなきゃ。
買って欲しい。
1試合でも多く。
まだまだみんなと一緒にいたい。
明川の対降谷の作戦はバットを振らないこと。
遅かれ早かれこういう作戦を取ってくるとは思っていたとはいえ、なかなか厳しい立ち上がりとなった。
エースの5番、楊舜臣に2ベースヒットを打たれて、先制された。
この夏、初めての追いかける展開。
純先輩がヒットで出て、哲先輩の打球はさっきと同じ様な所へ。
でも、ファインプレーによって阻まれた。
勢い付いた明川ベンチと落胆の色が見える青道ベンチ。
0がスコアボードに積み重なっていく。
揺さぶりもかけてきて、降谷くんの体力を削りにきてる。
肩で息をしてるってここからでもわかるのに…気迫のピッチングでアウトを重ねていく降谷くんを見ていたらなんだか泣けてきた。
フォアボールでランナーが出た所で、沢村くんにピッチャーが変わった。
でも、降谷くんはなかなかマウンドを降りない。
御幸くんが降谷くんに向けて話している。
降谷くんの為、チームの為を思ってきっとキツイ事言ってるんだ。
必ず逆転してくれるって信じよう。
「貴子先輩、私アイシング作ってきます。」
スタンドの階段を駆け下りて、ベンチ裏に向かう。
アイシングを降谷くんに手渡した。
「お疲れさま、これが肩でこっちは首元を冷やして。」
「すみません、ありがとうございます。」
「よく投げたとみんな思ってるからね。逆転、してくれるから。絶対!」
マネージャーの私にこんなことを言われても、気休めにもならないかもしれないけど、声をかけずにはいられなかった。