第17章 声援
スタンドに戻ると、沢村くんがセットポジションに入った所だった。
「あのインコース!」
すごい!すごい!監督に投げ込んだあのインコース。御幸くんも強気なリードはさすがだ。
サードフライに打ち取って、青道の攻撃は純先輩から。
見事な悪球撃ちで2ベース、哲先輩には飲まれてしまったみたいなフォアボール。ウガ先輩が送りバントを決めて、バッターは御幸くん。
この前と同じ、お守りを握るルーティンをしていた。
前進守備を見た御幸くんの目が変わった。
おもしれぇって思ってそうだな…。
ファールで粘ってるけど…いつもの余裕がないかもしれない。
御幸くんなら相手の配球を読んで狙い撃つ!
アウトローのボールを左中間へタイムリースリーベースヒット。
同点、同点だ。
3塁ベース上にいる御幸くんと目が合った気がした。
あの人は、私が球場のどこにいても必ず見つけてくれる。
ユニホームの下、お守りをギュッと握りしめて拳を突き上げた御幸くんはやったぞって言ってるみたいだった。
スクイズ失敗で同点止まり。
沢村くんも相手ピッチャーも全く譲らない展開になってきた。
試合が動いたのは7回、代打春市くん。狙いすましたかのようなヒットに、沢村くんの絶妙な送りバント。
倉持くんが相手のエラーを誘って、透かさず盗塁。
外したボール球を亮介先輩が必死に転がした。
2ランスクイズの間に、そつない走塁で2塁へ。
ノッてきた青道は本当に強い。
この回一挙5得点。
ノリくんのリリーフも成功して、そのまま試合は終わった。
ベスト8進出を決めた。
「舞ちゃん!」
ベンチを引き上げて、片付けをしてる所に御幸くんが走ってくる。
彼はハイタッチのポーズを取った。
「ちょっと、高い!届かないんだけど!」
「あー、ごめんごめん。はい」
ちびっこ扱いにムカつきながらも、両手を御幸くんの手に合わせた。
「あいつのお守り効果絶大!」
「御幸くんの実力!自身持って!」
「配球を読んだのもあるけど、あれだけ集中できたのはやっぱこれのお陰かもな。」
私の手を取ってお守りの所に持っていく。そこにはちゃんとあった。
兄貴、御幸くんが兄貴の気持ちも一緒に戦ってくれてるよ。
すごいね。