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ダイヤのA 御幸一也

第15章 舞台へ


「あれ?他の人は?」

「練習中。俺はこれ見てた。」

初戦の対戦相手の偵察してきたデータ。
うちはシードだからまだどこか初戦の相手かわからないのに…2校分チェックしてるのは、さすがだと思った。

「邪魔しちゃったね。」

「いや、もう見終わった所だし」

御幸くんの机の上、コルクボードにいろいろ貼ってある。
その中に、ボールのマスコットがぶらさがってた。

「あーあー、見つかっちゃった」

「これ…今まで渡してきたお守り?まだ持ってたんだ」

去年の夏、秋の大会、春の大会。
御幸くんの野球バックには真新しいお守りがぶら下がっている。
大切にしてくれると思うと嬉しくなった。

「舞ちゃん、甲子園決まったら…話ある。」

御幸くんに名前を呼ばれて振り向けば、御幸くんと机の間に挟まれた。
思ったより近くて、びっくりして机の上に手をついた。

ついた手に、御幸くんの手が重なる。

「決まったら?今じゃなくて?」

「そ、決まったら。」

「気になる…じゃん。」

ただならぬ雰囲気に言葉が詰まる。

「気にしてて。俺のこと応援して。」

「応援はするよ!全力で!狙い撃ちだって大声で歌う!」

御幸くんのヒッティングテーマ。この前狙い撃ちにしたって教えてもらった。
御幸くんにぴったりのそれしかないって曲。

「ん、ありがとう。」

コツンと肩に御幸くんのおでこが当たる。
お風呂入ったのか爽やかなシャンプーの香りがした。

「いよいよ、始まる。」

「うん、いよいよ…だね。」


スッと御幸くんが離れてビシッと拳を出した。


「甲子園、行こうな。
あいつの気持ちも一緒に俺は全力で戦う」


兄貴、御幸くんがこう言ってくれてるよ。
兄貴が惚れ込んだ捕手は、力強く言ってくれたよ。

「うん、私も、スタンドのメンバーも全力で応援する」

差し出された拳に自分の拳を当てた。



「丹波さんたちにも持っていくんだろ?行ってきな」

「うん!行ってくる!おやすみ!」

丹波さん、哲先輩、亮介先輩、ウガ先輩に背番号のついたユニホームを渡しに行った。

幸いみんな一緒の部屋にいて、寮中を駆け回らなくてすんだ。

「あれ、なんか顔赤い?どうかした?」

「あ、いえ…なんでもないです」

「ふーん。じゃ、なんで御幸のシャンプーの匂いがマネージャーからするのかな?」

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