第14章 大会直前②
丹波さんは、顎の骨にヒビが入ってしまったみたいだ。
戻ってこられるかは、わからないけどエースナンバーは丹波さんに渡すと監督が、みんなの前で断言した。
このアクシデントでチームはより強く結束したように思う。
でも、練習中の声は出てないなと感じる。
夕方、室内練習場で哲先輩と純先輩が投球練習を始めた。
監督に呼ばれたみたいだから、そこでなんらかの話があったのだろう。
そこにクリス先輩、降谷くんと沢村くんが、通りかかる。
2人の投球練習を見て、慌てていた。
あぁ、そっか…そういうこと。
野手2人が投球練習をすることによって本職の投手の闘争心を煽ったのか…
投手陣3人の顔つきが変わったもんな。
「舞ちゃん、先輩たちのアイシングとストレッチ、よろしくな」
「はい!」
やるしかないんだ、やるしか。
丹波さんが戻ってこられるまで、できる事を一つずつ、確実に。
沢村くんが金丸くんに勉強を見てもらってるらしい。
彼らの部屋を訪ねる。
「あ、マネさんどうしたんですか?」
「ちょっと時間いい?すぐ済むから。
まず倉持くんにはこれ。明日までにこのノート映しといてね。私もテスト勉強するんだから。」
ヘーイとやる気のない返事が返ってきた。
「沢村くんにはこれ。
去年のだけど、同じ先生の科目あったら、傾向と対策練れるんじゃないかって。特に数学の先生は去年の問題使い回すことが多いからさ。」
「うぉー、舞姉さん!ありがとうございます。」
言い争いを良くしていた金丸くんが沢村くんのこと認めて助けてあげてるんだから、私もちょっとでも協力したい。
ありがとうございますと言った沢村くんには抱きつかれたのは意外だった。
「わかった、わかったから、金丸くんと一緒に勉強しな?メールはその後で。」
「沢村、御幸に言いつけんぞ。矢代から離れろ」
「俺がなんだって?沢村、お前が舞ちゃんに触るの100万年早ぇんだよ、ばーか」
御幸くんの乱入に5号室は賑やかになった。
「舞ちゃん、バカが移る前に行こ。」
御幸くんに回収される。
「あのバカの相手は金丸に任しておけよ、1年のマネージャーだっているんだし」
ありゃ、不機嫌になってしまった。