第14章 大会直前②
「役に経てばいいかなぁって思っただけだし。去年貴子先輩の過去問にも、私達助けられたでしょ?ヤキモチ?」
いつも、御幸くんに揶揄われているから、お返しとばかりにヤキモチかと聞いた。
「そうだよ、悪いかよ…」
予想してなかった、答えに御幸くんに渡そうと思っていたノートが手の中から滑っていく。
「あー、もう何やってんだ…」
ノートを拾ってくれた。
「あ、これは俺にか…って、なんて顔してんだ…」
「や、だって…その…」
「ふっかけてきたのは、舞ちゃんだろ?」
そりゃそうなんだけど、なんか…いたたまれない。
「私、もう行くね。おやすみ!」
逃げたな!と後ろから御幸くんの声がした。
教室でテスト範囲の確認を3人でしている時、
男子バスケ部の子がテーピング巻いてとやってきた。
足を引きずっていて、練習中に捻ったみたい。
私のテーピングが好評で他の部からもお願いされることも多くなった。
私の席に座ってもらって、私の太ももの上に捻った足首を置いて、腫れた足首にテーピングを巻いていく。
「今回だけだぞ
舞ちゃんは野球部のマネージャーなんだから」
ちょっと呆れ気味に御幸くんがキツめに言う。
「いいじゃん、独り占めすんなよ。この子に巻いてもらうと本当に楽になんの。いいななぁ、こんなマネージャーがいて、たまには貸してくれ」
「だーめ、お前なんか下心ありそうだし、これ以上貸してやらん」
巻き終わって立ち上がった私の手を引いた御幸くん。
バランスが崩れて御幸くんの膝の上に座っちゃった。
「お前が一番下心あんだろ、バーーカ」
倉持くんの手刀が御幸くんに入った。
「ねぇ、重いでしょ?離してよ」
「ちゃんと飯食ってんの?おかわりは3回だぞ」
「選手と一緒にしないで。あんなに食べられるわけないじゃない」
こんなことをよくやっているせいか、クラスの中で夫婦扱いされる。
最初は戸惑ったけど、今はすっかり慣れた。
それもどうかと思うけど…。
御幸くんは最近今までよりも増して距離が近い。
近い近いと制しでも、グイグイ距離を詰められる
なんなんだろうか、ほんとに。
「や、ちょっと…どこ触ってんの?!もういい加減に離して」
「御幸、お前、調子乗りすぎ」
再び、亮介先輩直伝の手刀が御幸くんを襲った。