第14章 大会直前②
このピッチャーを撃ち崩さないと、甲子園の切符は手に入らない。
縦と横の変化に緩急とは…敵ながらすごいとしか言いようがない。
純先輩の意見に激しく同意したい。
メラメラとレギュラー陣は燃えていた。
さっきの闘志が打撃に直結したみたいに、着々と点を積み重ねる。
丹波さんも無失点に抑えていた。
「調子いいみたいですね」
「そうね。」
宮内さんとブルペンに篭ってたのは、フォークを投げ込んでいたのか。
丹波さんが打席に立つ。
打つ気満々だ。なんだかさっきからベンチのムードもいいし、だんだんと仕上がってきてるような気がする。
でも…。
打ちに行った所に顔面にボールが当たった。
「丹波さん!!?」
大田部長の車で病院へと向かった。
「やっぱ落ち込んでる」
「御幸くん…そりゃ落ち込むよ…」
夕食もお風呂も全部終わって、あとは眠るだけ。
でも、全然寝られなくて寮を抜け出して、グラウンドにやってきた。
御幸くんも一緒なのかな…。
ベンチに腰をおろして、グラウンドを眺めている私の隣に御幸くんも座った。
チームの雰囲気もだんだんと良くなってきてて、明日は抽選会なのに。
夏はもうすぐそこなのに。
「でも、本当にきついのは丹波さんだもんね。選手でもない私が一緒のように落ち込んでられないよね…ごめん。弱音履いちゃった…」
「選手だとか、マネージャーとか関係ないって。丹波さんのこと心配してる気持ちはみんな同じだから。
そんなふうに言わないでよ。」
去年はクリス先輩、今年は丹波さん。
ケガって本当に憎い。
「マネージャーも野球部の一員、だろ?」
泣きそうになっちゃって、ゴシゴシと目を擦る
「こらこら、そんな乱暴にすんなって」
手を取られて、泣き顔をのぞき込まれた。
「泣くな。大丈夫さ。丹波さんが戻ってこられるまで負けねぇよ。負けられるか…」
力強く言った御幸くんはとても頼もしく見えた。
「泣いてる舞ちゃんも、かわいいな」
前言撤回!
でも、御幸くんのその一言で涙は引っ込んだ。
ほんと、この人には敵う気がしないな…。