第14章 大会直前②
第1試合 対稲実
ノリくんは8失点だったけど、一人で最後まで投げ抜いた。
沢村くんと一緒にベンチの片付けを一緒にしていた。
「沢村くん、先にこれ向こうに運んできてくるから、あとのまとめといてくれる?」
「はい!舞姉さん、任せてください!」
姉さんはやめて、姉さんは…
荷物を置いて戻ってくると稲実の成宮くんと原田さんが沢村くんとなにやら話していた。
「こんにちわ。」
「あ"ー、出たな、一也の女!」
「え、舞姉さん御幸一也の女だったんすか!」
「お前、1年か?知らねぇの?他校にも知られてんぞ」
「そうなんすか?!」
「ちーがーう!!」
「それよりこの1年が言ってることってほんと?」
「なにしゃべったの?」
「降谷のこととか、俺の…モガっ」
「ちょっと、ライバル校に情報喋っちゃだめだって
倉持くんに知られたらタイキック食らうよ?」
沢村くんの口を両手で塞いだ所に、倉持くんのご登場。
案の定、キックされてた。
「ひゃぁ…」
倉持くんのキックの反動で私までふっ飛ばされる
「おっと…舞ちゃん巻き込むなよな、倉持」
御幸くんが受け止めてくれて、転ばずにすんだ。
情報を喋っちゃったことを倉持くんに叱られてる沢村くんが、すみませんと私に謝ってくれる。
「ほらな、やっぱ一也の女だろ?こいつが彼女でもねぇ女にこんなに構うわけねぇんだ」
「お前、黙れ。うるさい。この子は特別。鳴だって、最初この子の事気に入って声かけてたじゃねぇかよ。一切相手にされてなかったがな」
「一也の女って知ってたら声なんてかけるか」
「だから、違うって」
未だに肩から御幸くんの手が離れてないから、丁重に退かしておく。
ベーって舌を出されたから、私もベーって返した。
何度も違うって言ってんのに、全然信じてくれないんだもん。
人の話をちゃんと聞いてほしい。
「舞ちゃん、相手のデータ…」
「任せて!丸裸にしてやる!覚悟しろ!」
「舞ちゃんて鳴に対してだけ、性格変わるよな」
「なに?なんか言った?」
「なんでもないです、はい。」
スライダーにフォーク、威力のあるストレート。
投手のお手本のようなピッチング、それをあの成宮鳴がやってると思うとなんか悔しい。