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ダイヤのA 御幸一也

第13章 大会直前


「この前は、ごめん。
どうかしてたな、俺。」

沈黙を破ったのは御幸くん。

一つ距離を詰めてきたから、詰めてきた分私は横にずれた。


「ちょっ、逃げないで…
地味に傷つく。もう、あんなことしねぇからさ。」

「確か、前もそう言った。」

「あーーー、ごめん。」

すっかりしょぼくれてしまった御幸くんに、今度は私が謝る番。

「心配してくれてたんだよね。唯ちゃん達にも私は危なかっかしいって、言われちゃった。
今まで謝らなくてごめんなさい。」

「俺さ、やっぱ舞ちゃんに応援されたい。
今日のライト線のヒットの時、喜んでくれたの嬉しかった。こっちまで声聞こえた。」

「や、アレは…えーと…」

「舞ちゃんに頑張れって言われたらもっと頑張れる。
なかなか頑張れって言わねぇじゃん?」



だって、この青道の人たちは、頑張ってない人なんて誰一人としていない。
みんながむしゃらで、みんな頑張ってる。
たった9つのポジションを取り合ってる。

そんな人たちに、もっと頑張れってなんて言えない。


「そういう所、ホント好き。1個お願いあるんだけど聞いてくれる?」

「なに?」

「頑張れって言って?」

そういう意味じゃないとしても、好きなんて面と向かって言われて、
改まって頑張れって言えなんて、なんか恥ずかしい。


ベンチに座っていた私の真ん前にしゃがみこんで、早く!と急かしてくる。

「御幸くんは頑張ってるよ。これ以上頑張れって言ったら、負担にならない?」

「俺、期待された方ができる子だから。」

ニカッて笑う御幸くんになんだか負けた気がした。


「頑張れ!御幸一也!」

「よしっ!期待に答えられるようにしっかりやらねぇとな。
明日の試合も頑張るよ。」

「頑張れ。」

「おぅ!じゃ、バット振ってくる」


頑張れ、御幸くん。頑張れ!

素振りを眺めていたら、倉持くんもやってきた。

「仲直りしたんだなー。お前らが一緒にいねぇと、大雪でも振りそうで怖ったぞ」

「倉持くん、疲れてないの?明日も試合なんだし、休めばいいのに。」

「それは御幸だって、一緒だろ?こいつが素振りしてんのに、俺が休めるわけねぇんだよ。いいところばっか持っていくこいつには負けたくねぇんだ。」

負けず嫌いっていうのは、立派な原動力になるんだなと思った。

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