第12章 夏合宿スタート
「あ、私お風呂入ってこなきゃ。お湯抜かれちゃう」
「ハハ、そうだな。行ってきな!舞ちゃん戻ってくるまで寝かせてもらうから。どうせまだなんかやるんだろ?」
ゆっくり寝かせてあげようと、私もゆっくり用事を済ませた。
マネ室に戻ると、気持ちよさそうな寝息を立てて御幸くんが眠っていた。
メガネつけたまんま
壊れちゃうといけないから、メガネ取ってあげようと手を伸ばす。
「おかえり。」
「お、起きてたの?驚かせないでよ」
パシッと手首を掴まれた。
「風呂上がりだからしょうがねぇのかもしんねぇけど、何その格好。」
「へ?どこか変?」
どこか変な所あるかなと確認したけど、ルームウエアのノースリーブのセットになったショートパンツに、薄手のパーカーを羽織った姿だった。
「あのさ、前から思ってたんだけど、舞ちゃん無防備すぎ
ここは野球部で男ばっかだろ?女の子がそんな格好してウロウロしてたら、襲われたって文句言えねぇぞ」
いつになく激しく言われる。
「でも、部員だしマネージャーだよ?そんなの起こるわけな…」
掴まれていた手首を引き寄せられて、気がついた時には御幸くんに押し倒されていた。
「抵抗できる?」
「冗談やめてよ…」
両手首を掴まれて、跨られて、もがくけど…全然ビクともしない。
「できないでしょ?自分がか弱い女の子だって、わかった?」
御幸くん、目が真剣だ。
その目、怖い…
スッと御幸くんが退いて、引き起こされた。
また掴まれた手を私は、払い退ける。
「こわかった…御幸くんのばか…」
マネ室を飛び出して、一目散に女子寮の自分の部屋に駆け込む。
ベットに潜り込んで、まだ高鳴っている心臓に沈まれ沈まれと念を送る。
上から私を見る御幸くんの男っぽい視線を思い出して、静かになり始めた心臓の鼓動がまた早くなった。
あ、マネ室の鍵、かけ忘れた…。
もう、どうしよう…明日どんな顔すればいいのか、全然わかんない。
合宿中なのに、なんであんなことするのよ、ばか御幸!!
合宿中は話しかけられても、スルーし続けた。
何事もなかったように話しかけてくる御幸くんに、戸惑ってしまう。