第12章 夏合宿スタート
「また御幸と距離おいてんの?」
「合宿中だし、ほら捕手ってやることたくさんあるし、私もお守り完成させなきゃ夏の大会始まっちゃうしさ
距離置いてるとかそんなんじゃないから…」
幸ちゃんと唯ちゃんが、私の部屋に泊まりに来ていた。
フェルトを丸く切って、ボールの縫い目を赤い刺繍糸で作っていく。
一つ一つに選手の名前も刺繍した。
「御幸は、構ってほしそうだけどねぇー
さては、なんかあったな?!」
図星……。
幸ちゃんが見透かすように言うから…手元が狂って針で指を刺した
「いったぁ…」
「完全に図星じゃん…」
「何かあったと思う?」
「まさか御幸のやつ、とうとう…」
「いやいや、まさか…合宿中だよ?」
こらこら、コソコソ言っても狭い部屋だし全部聞こえてる。
「怒らせたのは私だから、本当なら私から謝らなきゃいけないんだけど…」
「やっぱなんかあったんじゃん」
「怒らせたって?」
「無防備だって怒られたの。女の子だって自覚しろって」
「あー、それね。私らも前から心配してる事だよ」
ビシッと指を刺されてキョトンとしてしまう。
「クラスの男子とか他校の野球部とか、舞に熱烈な視線送ってるの全く気づいてないでしょ?
男、女関係なく接せれる事は、舞の長所だけど、勘違いしちゃう輩も少なからずいるからね。
1年の時だって、しつこく付きまとわれて、それを御幸と倉持がシメに行ったでしょ」
「あん時の倉持、元ヤンていうのを盛大に発揮してたな、あれは外野の私らも怖かった」
「自覚してないのがたまに傷だけど、舞は可愛くてスタイルもいいんだから、誰かに隣取られちゃうかもーって心配なんだよ。」
「そうそ、それにさっきお風呂の時思ったけど、あんた胸でかくなった?
触らせろこの野郎!」
「きゃー、やめてやめて、くすぐったいって」
貴子先輩、春乃ちゃんも加わって、マネの恋話大会が繰り広げられた。
貴子先輩も春乃ちゃんも気になってる人いるんだ…もちろん、唯ちゃん、幸ちゃんも…
私だけじゃん…何もわかってないの…
モヤモヤした気持ちを抱えながら、合宿は試合を残すのみとなった。