第10章 怒り
関東大会。
横浜港北学園との対戦。
丹波さんが中盤つかまって、計6失点。
んー、打線も抑えられてる。
降谷くんの登場に球場全体がどよめいていた。
初球、空振りを取ると歓声が上がる。
ここからはよく見えないけど、御幸くん絶対ドヤ顔してるよね。
見逃せばボール。
打者はつい手が出てしまう高めのストレート。
初見で見極めるのは難しい。
あれだけ荒れてるあの球威のボールを受け止める御幸くんは本当にすごい。
9回に3点取ったけど、あと一歩の所で敗れた。
ミットの手入れをしてる御幸くんを見つけた。
「はい、これ。いつもの。」
「ははっ、また、これ。」
負けた時の恒例行事。
負けた時程、リードに頭使ってるだろうから、チョコレートの差し入れをしていた。
「たまには糖分補給もね」
甘いものが得意ではない御幸くんにチョコレートを渡す。
あーんと口を開けて待ってる御幸くんの口にチョコレートを放り込んだ。
若干の嫌がらせも込めている。
苦手なチョコレートを食べたくなかったら勝ってこいと。
「関東大会、終わっちまっまたから、あとはいよいよ夏の本戦か」
「うん」
御幸くんが、自分の座っている隣をポンと叩いたから、そこに腰を下ろした。
西地区は強豪校揃い。
どこまで勝ち上がれるか。負けたら最後。そこで3年生の高校野球は終わってしまう。
わかっていても、震えるほど怖い。
鉄壁の二遊間の亮介先輩と倉持くん。
不動の4番の哲先輩。
1軍に帰り咲いたウガ先輩と丹波さん。
プレーでみんなを引っ張ってくれる伊佐敷先輩。
2年生ながら外野のレギュラーを勝ち取った白洲くん。
それに
御幸くんがいるもん。大丈夫。
このチームは強い。
「そんな顔してんなよ。安心しろ。俺達の練習を1番見てきた舞ちゃんがチームの事信じてくれなきゃ、勝てるもんも勝てねぇよ」
御幸くんの腕が肩に回ってきて、大丈夫だと言ってくれる。
「そうだよね、先輩達なら必ず…大丈夫!大丈夫!」
「信じて。」
「うん!信じてる。」
夏の本戦の前に、合宿もあるし、不安になってる暇なんてないんだ。