第68章 開会式
「今年もいる?」
「してくれるなら。」
「任せて!」
選手が望んでることならなんでも、どんなことでもやりたい。
ベタベタのベタにはちみつレモンでも作ってみる?
調べれば調べるほど疲労回復にはもってこいなんだよね。
目の前に甘いの苦手な人もいるし、一工夫必要かも。
おしゃべりしながらだったけど、一通り試合には目を通した。
一也は素振りに、ナベちゃんとは誰かはどの試合をどういう組み合わせで偵察しに行くか最終チェック。
そこに沢村くんが練習着と制服のシャツを持ってマネ室にやってきた。
「姉さん、ボタンつけてくれませんか?」
「なんだよ、沢村。ボタンもつけれねぇの?」
「一也、私がつけるよって言ったの。」
「そうなんすよ、だいぶ前に自分でつけようと試みて見たものの見事に針で指をぶっ刺してそれを見かねた姉さんがつけてくれるって!」
「不器用な奴だなぁ。」
左利きの沢村くんなのに、刺したあと何故か針を右手に持ち替えた時は慌てて止めた。
利き手に刺したら大変でしょ?って。
付け終わったシャツ達を沢村くんに返す。
すぐそこで一也が素振りをしていた。
自分もなんかしなきゃとウズウズしてる沢村くんに声をかける。
「落ち着かない?」
「え、あ…はい。みんなどこかしらでバット振ってるから…俺もって思うけど何もするなってキャップに止められてていいのかなぁって。」
「チューブトレーニングでもしとく?インナーマッスル鍛えられるし。フォームの確認にもなるよ。やり方知ってる?」
「だいたいは。降谷もよくしてたし。」
何かしてたほうが落ち着くって気持ちわかる。
沢村くんは試合のビデオを見るとかしてなんとか落ち着こうとしてたけど、なんとなく顔が怖い。
ナンバーズを磨きたいって気持ちが全面に出てる。
冬の間、2人でコツコツ積み重ねてきたナンバーズ。
根気強く付き合ってきた一也もすごいけど、沢村くんの努力の賜物。
エースナンバーを背負った彼がどんなピッチングを見せてくれるのか楽しみ。