第68章 開会式
野球の嗅覚が鋭い2人がやってきた。
「どこで手に入れたの。」
「敵に回したくねぇわ。」
おじさまは榊野球のファンだったから、復帰を喜んでいたけど、やっぱり強い青道であって欲しいということで内密に映像を貸してくれた。
「おじさんキラー…」
「そんなんじゃないってば。これ貸してくれた人からの伝言。
今年こそ夏の甲子園で青道野球見たいって。」
発破をかけたら一也は苦笑い。
由良総合は必ず勝ち上がってくると思う。
先に2勝してる相手だし、勢いついてる相手は恐ろしい。
「沢村くん大丈夫かな?」
「倉持がなんとかしてくれるだろ。聞いたか?
寝てるあいつの背中にでかでかと1ってマジックで書いたの。」
「見た見た。風呂で騒いでたよ。油性だから取れないって。」
倉持くんらしいけど、もっと他に方法なかったのかな?
よりにもよって、油性…。
ご愁傷さまとしか言えない。
10日もこのまま気負ってたら試合始まる前に疲れちゃうよね。
2人にも試して貰おうかな。
試合を見ている2人にビターチョコレートとハーブティを淹れた。
「なにこれ?お茶?」
「ハーブティなんだけど、リラックス効果があるんだ。
初心者でも飲みやすいの選んだつもりだけど、よかったら飲んでみて。」
「俺はいけるぞ。」
「俺もこれ好きだな。」
「チョコもビターの方がリラックス効果高いらしいから、一也も食べられると思うよ。」
「ふーん、マネ室がカフェみたいになったな。」
マネージャーの間で流行ってるハーブティ。練習後に飲むのが密かな楽しみだ。
「調べてたら面白くて。組み合わせで味も変わるしね。
この前自分でブレンドしたら、美味しいの出来て感動したけど、どれを何gずつ入れたかメモってなくて、もう二度と同じ味に出会えない気がする。」
しょんぼりしていると2人に笑われた。
「次はそれ飲ませてくれよ。」
「楽しみにしてるからね。」
そうだ、と一也が思い出したように呟いた。
「今年は作んねぇの?甘酒プリン。」
「あれ、評判良かったよね。」
「抜かりなし、食堂のおばちゃんに頼んで注文してもらってるよ。」
「あと凍らせたフルーツ。試合後に食べるとちょうどいい頃合いになっててさ、勝ったあとに食うからまた格別にうまい。」