第65章 ※ みんながいるのに
「おまたせしました!沢村くん対戦しよ!」
さっきより人数減ってた。
「お待ちしておりましたよ。春市もずっと待ってました!」
「ごめんねー。」
テレビの前に座らせてもらう。コントローラーを受け取っていざ対戦。
背中が体温を感じた。
「み、御幸くん?!」
さっきみたいに私を抱え込んで、お腹に腕を回す。
「お気になさらずに…対戦すんだろ?」
「えー、気になるよ。」
一也がコアラみたいに私にひっついていた。
ユーカリの木になった気分。
気にするなっていうから、構わずにゲームを続けた。
「やっぱ春市くんには敵わないなぁ…。ねぇ一也、どのキャラがいいと思う?」
あれ?返事が帰ってこない…。
春市くんに様子を見てもらうと思わぬ返事が帰ってきた。
「御幸先輩、寝てます。」
「うわ、ホントだ!キャップの寝顔貴重。いっつもアイマスクしてっから」
「よくその体勢て寝れんな。」
倉持くんが一也の脇腹を突付く。
身体を捩ったから、一也が動く。
寝た人は重たい。支えられなくてポテンと床に転がった。
「ちょっとー誰か助けて…重い…」
「わー、姉さんがキャップに潰される!」
「栄純くんうるさい。」
「春市、御幸の野郎引き剥がすぞ。」
男2人で引き剥がそうと試みても、全然離れてくれない。
なんとか横向きになれて、潰される事は回避できた。
一也の腕の力は増すばかり。
足も絡んできて身動きができなくなってくる。
「一也、一也ってば!起きてよ!ねぇってば…」
みんなも笑ってないで助けて。
一也の腕から這い出した時にはかなり息が切れていた。
こうなってくるとほんとに寝てるのか疑問だ。
私がいた場所で一也の手が何かを探してる。
倉持くんが面白がってノラネコギャングのぬいぐるみをソッと置いた。
寝ぼけてぬいぐるみを抱きしめている姿を沢村くんのスマホのカメラが捉えた。
あーあー、みんなのおもちゃになっちゃって…。
「矢代、それしまっとけ。」
一也の近くでしゃがんでいる倉持くんは私に背を向けながらそう呟いた。
それ?
自分自身に視線を落とすと、かなりきわどいところまでファスナーが降りてる。