第64章 夏合宿
「舞先輩何作ってるんですか?」
「納豆嫌いの子たちにスペシャルメニュー。」
チーズと納豆を混ぜ合せて焼くだけ。
一口代にして焼くから、グラウンドでも食べやすい。
「沢村のために舞が作ったんだから、残さず食えよ」
「姉さんが俺のために…食います!」
と意気込んでいたけど、だめだったみたい…。
好きな子たちには好評で合宿中のメニューに追加決定。
みんながベーランしてる間に、自主練の準備に走る。
なんとか間に合った。
「そんなに急がなくてもいいのに、日が暮れたとはいえ日中は熱くなってきたし、ちゃんと休んでんのか?」
「うん、大丈夫。一也は何するの?投げよっか?」
「その前に水分補給しとけ。」
投げられたスポーツドリンクをキャッチした。
「今日倉持の部屋集合な。」
「やるの?」
「みたいだな。」
高齢のゲーム大会。今日は一年生も誘うみたい。
それぞれ1年生を連れてきて5号室は賑やかになった。
結城くんから将棋の対戦を申し込まれた一也。
それを眺めつつ、ゲームの順番が回ってくるまで、部屋の隅っこで料理本を開いた。
みんなの騒ぐ声がだんだんと子守唄みたいに聞こえる。
「舞先輩、眠いなら送って行きましょうか?」
「んー、大丈夫。今日こそ春市くんに勝ちたいから。」
こっくりこっくり船を漕いでいる私に降谷くんが声をかけてくれた。
目を閉じたまま答えたらクスッと笑われた気がした。
ゲームしたいのに、もう限界…。まだお守り作り終わってないのに…千羽鶴も最後の仕上げしなきゃ…。
「あれ?舞は?どこ行った?」
「ここの隅っこで眠ってます。」
一也と降谷くんの声がして、少しの睡眠から目が覚めた。
目をこすって、明かりの眩しさに目が眩む。
目が慣れてきたと思ったら、一也に横抱きにされた。
「きゃっ、え、なに?おろして。」
「眠ったやつは強制送還。」
「やだ!ゲームするの。」
「子供みたいなわがまま言わない。」
奥村くんにドアを開けてと頼んでいた。
「見せつけてんじゃねぇぞ。」
「いちゃつくんなら、他所でやれ。」
と、結局追い出された。
「あいつらに付き合ってたら何時になるかわかんねぇんだから、適当な所で抜けるのが得策。1年とのコミュニケーションは取れたしな。」