第64章 夏合宿
「ノート抱えてどこ行ってたんだ?」
利き手を骨折した小野くんが授業中大変だろうと思って、同じ先生の授業のノートは2人分とった。
でも、必要なかったみたい。
ゾノくん、麻生くん、関くんが手分けしてノートを取ってたみたい。
「優しいね、みんな。」
「やるなぁあいつら。」
「じゃ、そのノートは俺がもらう。」
「なんでよ!」
いや俺が!と一也と倉持くんがノートの取り合いをしてる。
今日の一也は隠れてずっとスコアブックを見ていたから、ノート取ってないんだ…。
とりあえずノートは没収をかけておいた。
練習中の一也はバッティング好調。
ミスショットもほとんどなく東京選抜がよほど刺激になってるみたい。
次の試合では、小野くんがランナーコーチとしてコーチャーボックスに入った。
誰よりも声を出して、誰よりもチームの指揮を上げてくれてた。
6月16日の練習前にとうとうベンチ入りメンバーが発表された。
ベンチ入りから外れた、関くん三村くん川島くん3年生は涙を飲んだ。
みんなの涙が…胸に刺さる。
事実上の引退勧告。
監督の言葉に私達マネージャーも泣いてしまう。
「ベンチ入りはできないのはわかってた。でも夏はまだ終わってない、これからだから。俺達の分までみんなが戦ってくれる。
少しでも手助けしたいから、矢代も力貸してくれよ。」
「ナベちゃん…」
落ち込んでる私に声をかけてくれるナベちゃん。
本当なら私がしないといけないのに。情けないな。
「ごめんね。頑張るから!手伝わせて、私達も一緒に戦おう。」
「そうだね。」
合宿初日。3年生は誰一人かけることなく練習に参加してる。
煽ってエールを送り、後輩たちは感謝を声に出す。
また、グッとチームが纏まっていく。
グラウンドでの休憩時間。
不安に思ってた一年生マネージャーたちのおにぎりもどんどんなくなっていく。
夏バテ効果がある納豆も大人気。
その中で1人沢村くんだけが冷や汗をかいてた。
苦手なんだよね。
うんちくを並べつつ混ぜ続けてる沢村くんの前に人だかりが出来てた。
やっぱ無理だったんだ…。
明日はちょっと工夫してあげようかな。
ベースランニングでは毎年の一年生のベンチ入りメンバーには試練だ。
一也でさえ脱落しかかった。