第63章 白羽の矢
次に会う時はときは敵同士。
本当にいよいよ、最後の夏が始まる。
帰り支度をして、電車に乗り込む。
一也が成宮くんにクセが出てたぞと話した。
教えちゃうなんて、一也ってば優しいなぁ。
でもきっとそれは…。
「へぇー、意外な展開。言っちゃうんだ、それ。こっちとしては持ち帰ってもらいたかったんだけどなぁ。お土産として。」
ほらね。これは成宮くんが考えた作戦なんだよ。
「もしかして、舞も気づいてた?」
「あの人達の性格考えれば、そうかなって。だから、言わなかったのに。」
「舞!お前、ほんとムカつく女だなぁ。だから小学生?なんて思われんだよ。」
「やめろって。」
「電車の中ではお静かに。」
私達が降りる駅に電車が止まる。
「選抜は譲ったけど、夏は俺達のもんだから。」
「潰し合いだね。」
電車のドアが閉まるのと同時に、成宮くんに電車の中に引き戻された。
「は?ちょっと…私、ここで降りるんですけど!」
一也も何か起こったかわかってなくて、唖然としてるのが走り出した電車の窓から見えた。
「どうしてくれんのよ!」
掴まれた手首が痛いんだけど。
「ちょっと、話したいことあったからさ。一也のいない所で。でも、まぁ…当たり前に一也の横にいる舞にいじわるしたくなっただけだけどな。」
意味がわかんないんだけど!
「情報担当のお前は俺らの事をどう報告するのか、キングは聞きたいってさ」
「ペラペラ喋ると思う?今日得た情報だって、1ヶ月あったら使い物にならないくらい進化しちゃってるかもしれないし。崩れてるかもしれない。」
同じ時間が与えられているから、こっちだってまだまだ成長できる。
あと1ヶ月どういう心持ちで過ごすか…。
「怖い相手には変わりないけど…。」
これが本音。でも、きっとみんななら大丈夫って信じてる。
「怖いって思ってるならそういう顔しときなよ。倒してやるって闘志むき出し。可愛くねぇな。」
「かわいいって思われても嬉しくないし、いい加減痛いから離してよ。」
次の駅について、電車から飛び降りた。
「じゃぁな。」
何がじゃぁな。よ…
反対側のホームに戻らなきゃいけないじゃない…。
スマホが振動を伝えてて慌てて出ると、私以上に慌ててる一也の声。
「なんで出ねぇんだよ。」