第63章 白羽の矢
そんなジーッと見られると書きにくい…。
「な、なに?」
「すげぇじゃん……」
え。褒めてくれたの?
「球種色分けしてんの?コースも?つうか、これ何?」
楊くんが三振を取ってベンチに帰ってきた。
スコアと配球表を同時につけていたから、結構忙しいんだけど…。
「うちのマネージャーすげぇだろ?」
「ムカつくけど、すごい。」
明日は大雪でも降るのかとカルロスくんが驚いてる。
スコアをつけていて気づいたことをネクストに入ろうとしている楊くんに伝える。
「うぉ、打った!」
さすが、やっぱバッティングもいい。夏、大会で見れないのが本当に残念だな…。
「何言ったんだ?」
「バッテリーの癖みたいなもんかな。これ見て…」
一也はなるほどと呟いた。
カルロスくんがフォアボールを選んで、白河くんが一球で、送りバントを決める。
一也が狙いすましてタイムリーヒットを放った。
4番のホームランでこの回、3点が入った。
「スタメンマスクも奪われて、4番も奪われてここで打たなきゃ何しに来たの?感じだよなぁ」
「御幸くんはあなたにそう言われるってわかってるから、ちゃんと結果を残したよ?」
「お前らほんとムカつくな。」
はいはいと軽くあしらった。
アメリカの投手が変わった。
腕が長くて見たことない軌道。特にスライダーがやばい。
スコアブックに"K"が積み重なっていく。
こちらも成宮鳴が登板した。
スタンドから見るよりベンチから見たらその圧力に背中がゾクッとした。
打席に立ったらその圧力に潰されると感じてしまうバッターもいそうだな。
てか、なにあのチェンジアップ。
確実に進化してる。
この人を打ち崩さないと甲子園の切符は手に入らない。
なにか攻略できる所、見つけたいな。
睨みつけるようにして成宮鳴のフォームを目に焼き付けた。
鈍い音がして、一瞬何が起こったのかわからなかった。
空振りしたバットが乾くんに当たった。
後ろに構えてて対策はしてると思った。
あの位置でもバットが当たるの…怖いな。
乾くんはベンチに下がって、一也がマスクを被る。
稲実4人とのやり取りが怖い…。あの一也が言い返せないって…。
「キャッチャーなら俺を輝かせてよ。」
成宮鳴にしか言えない言葉だなと思った。