第62章 激戦
「これを見たら、マネージャーがどんなに野球を好きなのか理解できました。悪態ついてすみません。」
「おせぇよ。」
「か……、御幸くん…いたの?」
一也って言いそうになっちゃった…。
これをやらかしそうだから、名前呼び避けてたんだけど、あまりにも一也が嬉しそうに返事してくれるから、二人のときは一也で、みんなといる時は今まで通りに。
「誤解してんなって思ったから、舞んとこに行かせたけど、また泣かされたらやだし見張るでしょ。」
「もうしません。」
降谷くんとのコンビもうまくいってたみたい。
沢村くんは相変わらずフラれてるけど、一軍に上がったら喜んでって言ってるみたいだから、奥村くんも少しずつチームに馴染んで来たのかな?
日曜日の試合の先発はノリくん。
試合後一也と話してて思わず泣きそうになった。
「ノリはほんとたくましくなった。俺に言われても嬉しくねぇかもしんねぇけどな。
俺らの代のエースは文句なくノリだよ。」
「それ、本人に言ってあげてよ。面と向かって、ちゃんと!」
ね、ノリくん。とたまたま一也の後ろにいた彼に話を振った。
「嵌めやがったな」
「御幸…お前に認められて俺は嬉しいよ。」
照れくさそうに、頬をポリポリとかいた一也。
夜、スタッフルームに呼び出された一也が戻ってきた。
呼ばれた要件は東京選抜の事。
「キャプテンは乾くんなんだ。気が楽とか思ってる?」
「当たり。」
「試合、見に行きたいなぁ…」
しみじみと空に向かって呟いた。
明川の楊舜臣くんともしバッテリーを組んだらどんなリードを見せてくれるのか、それが成宮くんなら?
一野球ファンとしてこんなにワクワクすることない。
「帰ってきたらたっぷり話してやるから、舞はこっち頼むよ。」
「うん。任せて、みんな一也がチームを離れても連勝止めないって意気込んでるから。」
「頼もしいな。」
いよいよ、東京選抜に行く日が近づいてくる。
一也がいないグラウンドがどんなに寂しいものになるか、想像できなかった。
金曜日、昨日ペンケースを一也の部屋に忘れた事を思い出して、慌てて取りに行く。
ノックをすると木村くんが開けてくれた。
「取りに来なくても持っていってやったのに、これだろ?」
「そうそうそれ。」
奥村くんが口を開いた。