第6章 一年生 ⑥
「矢代ー?どうだ調子は。熱下がった?」
「倉持くん…ごめんね。びっくりさせて。」
「いや、俺はいいけどよ。御幸が死にそうなくらい心配してた
なぁ、白洲。」
「そうだね。あんな御幸、初めて見たな」
ん、と差し出されたのはポカリ。
「まだ、顔赤いな。もうちょいで練習終わっから、そしたら送ってってやるから」
「迷惑かけてごめんなさい」
「いつも世話になってんだ、これくらい楽勝楽勝。」
練習が終わって、トレーナーやらベンチコート、マフラーまで巻かれてモコモコになった。
「御幸が送ってくって」
「え、やだ…迎えに来てくれるか聞いてみるよ」
「ちょ…そんなはっきりと…見てみ。御幸項垂れてんぞ。
おーい、息してるか?」
「移したらやだし…」
御幸くんと二人きりはなんとなく避けたい。
父親が迎えに来てくれて、それから3日間寝込んだ。
「はよ。もう体調はいいのか?」
「倉持くん、その説はご迷惑をおかけしまして…」
「え、何キャラ?!」
「ハハッ!もう元気!心配してくれてありがとう!」
高島先生に朝練はまだ出てくるなと念を押されたから、教室で倉持くんと久々に会話した。
「御幸ー!矢代復活したってよ!」
ドキンと心臓が跳ねた。
お正月のあの一見以来御幸くんの名前を聞くとこうなる。
忘れるって言ったのに。
「はよ。今日は練習来るの?」
「行くよ。」
バックを何やらゴソゴソして、数冊のノートが机の上に置かれる。
「休んでた分の授業のノート。写しとけよ。テスト範囲のとこだし。
俺ので悪いけど」
「あ、ありがとう!助かる!」
言い方がトゲトゲしいのは、送ってもらうのやだって言ったから?
「御幸が、真面目にノート取ってるなんてなぁ。いつもより気合いはいってんじゃねぇ?愛だな愛。」
「うっせ!倉持もいつも舞ちゃんのノートに助けられてんだろ?これくらいの誠意見せろよ」
騒いでる二人をおいておいて、早速ノートを移させてもらう。
「あー!舞!出てこれるようになったのー?大丈夫?」
「唯ちゃん、幸ちゃん
休んじゃってごめんね。」
「舞が、いないと大変だったんだから!
特にあいつ。拗ねちゃってさ、御幸をコントロールできるの舞だけだからさ」