第59章 事件
「もちろん!つけなくてどうすんだよ。」
「へへ、嬉しい。」
つけてと、御幸くんの分を差し出してくれて受け取る。
利き足とは逆の足首にミサンガを結びつけた。
御幸くんの願いが叶いますように。
「舞ちゃんのは俺がする。」
椅子から降りて、太ももの上に私の足を置いた。
ヤバイなぁ、これ…お姫様にでもなった気分。
シンデレラってこんな気持ちで王子様にガラスの靴を履かせてもらってたのかな。
「舞ちゃんの願いは?」
「やっぱり、甲子園。
みんなと1番熱い長い夏にしたい。試合終わりの御幸くんのキラキラした笑顔が見たい。」
「欲張りだな。」
そう笑いながら御幸くんは結んでくれた。
結び終わったのに、足首のミサンガを愛おしそうに見つめてて、その視線で溶かされそう。
「あっ!御幸くんのお願い事聞くの忘れてた!」
「大丈夫!結んでる時にしっかり願ったから。」
「ずるいーー。教えてよ。」
「内緒。」
そう言って御幸くんは立ち上がった。
いつかの初詣の時と逆だ。
お守りは野球バックにつけてくれた。
それを見た他の選手たちも欲しいって言ってくれたけど背番号ついてないからまだダメとなんとか納得してもらう。
「ずるいよなぁ、キャップだけ先貰って。しかもキャッチャーミット付。いいなぁ。」
「そりゃ俺は特別だからな。」
バチンとウインクをされて、茹で蛸になった。
「お前も彼女に作ってもらえば?若菜ちゃんだっけ?」
あいつはただの幼なじみだ!と叫んだ。
「そんな余裕ねぇっすよ。それにこんな出来た彼女さんそうそういねぇでしょ。」
沢村くんからもベタ褒めされて、恥ずかしくなって逃げ出した。
走ってる降谷くんを見つけてミニ千羽鶴を渡す。
「俺に?ありがとうございます。」
「早く良くなりますように。」
もうこれ以上故障者が出ませんように。
小野くんから聞いた話。
自分のスペースの1番目立つ所に飾ってくれてるらしい。
「舞先輩、これ…」
「これって。」
スピードくじの私が欲しかったキャラ。
物欲センサーが発動して手に入らなかったのに。
「もらっちゃっていいの?」
「はい。マッサージ受けに行った時に近くのコンビニでやってみたら、出たんでもらってください。」
自分にはこれがあるからと私が渡したのを取り出した。