第59章 事件
2週間の投球禁止令がでて、落合コーチが降谷くんのトレーニングに付き合っていた。
Aグラウンドでは練習試合。
対鳴工。
監督は天久聖一を想定してプレーしろと声をかけている。
先制点を沢村くんにプレゼントして守備に入る前のバッテリー間の話し合い。
グローブとミットでタッチをする光景がたまらなく好きだなぁと二人を見て思った。
沢村くんにみんな期待してる。
奥村くんもタイヤを抱えたまま試合を見ていた。
沢村くんノリくんの継投で鳴工に勝利をあげた。
続いて2試合目、東条くんが投手復帰。金丸くんの2ラン、2年生の活躍でゴールウィークから8連勝。
「降谷くんの怪我は心配だけど、みんなすごいね。期待に答えて結果残して。泣きそうになるね。」
「涙もろくなってね?」
3年生にもなると後輩の活躍が眩しい。
元々泣き虫だったなと御幸くんが揶揄って来た。
私は必勝祈願の千羽鶴を折っていて、御幸くんはスコアと配球表を眺めていた。
青色の折り紙の裏にお願い事を書いた。
降谷くんの怪我が早く治りますように。
青系の折り鶴だけを集めてミニ千羽鶴を作る。
リボンも青色にした。
「できたー!見て見て。可愛くない?」
シロクマのマスコットもガチャガチャで手に入れておいて良かった。
千羽鶴にくっつけて御幸くんに見せた。
「完全に降谷仕様だな。あいつ喜ぶと思う。」
ぶら下がってるシロクマをツンと人差し指で突きながら御幸くんは頬杖をつく。
「なに?」
「あいつだけずるくね?俺のは?」
「欲しいの?」
「…………別に」
拗ねておられます?
しょうがないなぁ…。ちょっと早いけどもう渡しちゃおう。
「はい。」
手芸部の友達に協力してもらって作ったレザークラフト。
キャッチャーミットって複雑で難しかった…。
御幸くんのミットの色のレザーがなかなか見つからなくて…。
ユニホーム型のお守りと一緒にしてストラップをつけた。
「舞ちゃん…まじか…これはヤバイ…すっげー!!」
ミットの出来はなかなかだと思う。自信作。
もう作れる気はしないけど。
「あとね、これもあるの」
ベタだけどミサンガ。
おそろいに作っちゃった。
「舞ちゃん!!」
カバっと抱きしめられて、ありがとうって。
「感動しちまった。」
「つけてくれる?」