第58章 お互いの気持ち
「どうするもこうするも、応援するだけだよ。
行くかどうかは御幸くんが決めるし、彼がどんな決断をしたって私は応援するだけ。」
「お前はほんと強いな。」
「そうかな?」
夕食中の話題も御幸くんのプロの話。
「お前はどこに行きたいんや?」とゾノくんが話を振ったから。
「行きたい球団はないんか?」
みんなのご飯をついでから自分のを用意していたら聞こえてきた会話。
「今はお前らと甲子園行くことしか考えてねぇよ。先のことは全部終わってからでいいだろ?」
一瞬沈黙があって、ゾノくんが口を開いた。
「そんなことが聞きたかったとちゃうねん!!」
「いつからそんな優等生キャラになったんだよ」
「なんか嘘っぽい」
「キャプテンとしての発言だよね。本音は?」
なんだよそれ…と御幸くんは困ってる。
「でもさ、プロ行ったらさ美人のアナウンサーとかかわいいタレントとかとお近づきになれるかもしんねぇよな…スタイルのいいグラドルとか…」
誰かがポツリと呟いて、羨ましいと言う。
「矢代も悪くねぇけどやっぱタレントと比べるとなぁ…」
その言葉を発した人は私がここにいるって知らないっぽい。
何人かの部員はチラリと私を見た。
なんで見られているのかわからなくて、はてなマークを浮かべると、また違う人が、御幸くんに好みの芸能人とかを聞いていた。
「矢代がいるよ」とナベちゃん。
御幸くんの隣の席にお盆を置いていただきますと手を合わせた。
「どっから聞いてたんや?」
「ん?最初からだけど?ずっと食堂にいたもん」
ズッと味噌汁を啜った。おばちゃんのお味噌汁今日も美味しい!
みんながジーッと私を見ている。
「な、なに?」
「無言で怒ってるとか?」
なんの事だろう…怒る要素あった?
「妬かないのかってみんなは言ってる。」
「あー、そのことか…。
タレントさんと比べられて相手にならないのもわかってるし、御幸くんがそれ目当てにプロ野球選手になるとも思えないし、ホイホイついていかない人だって思ってるし、信じてる。
かっこいいのもモテるのも覚悟の上で付き合ってるから、妬いてたらキリないよ…」
ぽかんとしてるみんなを尻目にもぐもぐと食事を続けた。
「ごちそうさまでした。」
「え、もう終わり?舞ちゃんはもっと食え!」