第57章 御幸の気持ち ⑧
いきなり声のトーンが変わって、キョトンとしてしまう。
なんか倉持に愚痴ってるのか?
「あいつがそんな事言わねぇのはお前が1番わかってんだろ?
自覚してるかわかんねぇけど、時々沢村とお前を見る目が…寂しそうっていうか…よくわかんね…。
ただ…あいつの隣にはお前がいねぇとこっちがなんか落ち着かねぇんだわ」
なんだそれ…。
「ひとりでいるあいつは珍しいからな。みんなほっとけねぇって言ってんぞ。そのうち心変わりされても知んねぇからな!」
最近代わる代わる舞ちゃんの相手を誰かがしていると思ったら、そういう事か?
「心配してくれてんだ。倉持くん優しいなぁ。」
「揶揄うなら本当にどうなっても知らねぇぞ。盛大に後悔しろ!」
「奪わせねぇよ。」
簡単に取られて溜まるかよ。
自分で言っといてなんだが、舞ちゃんが隣にいねぇと落ちつかねぇのは事実。
この前なんか、いると思っていたのにいない舞ちゃんに話を振って沢村に盛大に馬鹿にされた。
「キャップ!らしくない事やって強がんないでくださいよ」って、言われたっけ。
「それだけお前と矢代が一緒にいることは俺らに取って当たり前なんだ。諦めた奴もいる。簡単に壊れてもらっちゃ困るんだ。」
壊れるつもりはねぇけど…。
そんな脆く見えてるのか?
心配すんなって言って、舞ちゃんが眠る自室へ戻ってきた。
「どこ行ってたの?」
寝ぼけてすり寄ってくる。
答えようとした時にはもう眠っていた。
ほんとかわいいなぁ。
眠っている舞ちゃんに俺のこと好き?って聞く。
答えられるわけねぇのに、ずっと答えを待っていた。
「すきだよ…」
そう返ってきて思わず笑ってしまう。
寝言も可愛いとか反則。
困るよ…。
好きすぎて、まじで困る。
こんな感情今まで知らなかったし。
野球ができる幸せ。
好きな子が隣にいてくれてる幸せ。
手にある幸せを大事にしなきゃな…。
舞ちゃんの寝顔を見ながらそう思い目を閉じる。