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ダイヤのA 御幸一也

第56章 ※   思い出した体温


「ノリくん、最近いい顔してるね。」

「そうか?言ってもあと1ヶ月半だしな。後悔したくねぇんだ。」

「引き締まったっていうか…男の顔してる。御幸くんも倉持くんもみんなそうだけど、腹くくったって感じ?」

よく見てるなってノリくんは笑った。
倉持くんほど鋭くないけどね。

「あいつらの成長が早すぎて置いてかれるって焦ってたけど、今はそんな事思うのはちっぽけだなって思ってさ。
お前に発破かけられた時が懐かしいよ。」

「お恥ずかしい…ごめんね。悩んでたのに追い打ちかけちゃったよね。」

「あの言葉があったから、今までやってこれたんだ。
お前の分までって言うとおこがましいけど、悔いのない夏にしたい。」

うん、そうだね。私も後悔だけはしたくない。

「短い夏休みになるかもしんねぇな。」

「もう夏先取りしたから、どんなに短い夏休みでもいいよ!」

昨日泊まった旅館の人の計らいで、遠征メンバー全員で花火をしたし、マネージャーは浴衣を着せてもらった。
野球以外の夏の想い出はこれで十分だよ。

群馬は東京と違って星が綺麗だった。それもいい想い出。
みんなと花火出来たから満足。


着せてもらった浴衣も、みんなが褒めてくれたし…。
昨夜の事を思い出して、頬が熱くなった。




御幸くんと線香花火の勝負をしたり、ツーショットで写真を撮ってもらったり。
その時のツーショットはこっそり待ち受けにした。
ラインのアイコンは唯ちゃんが撮ってくれた、御幸くんと並んで花火してる時の後ろ姿。
幸ちゃんが絵になってるからって勝手に変えられちゃったけど。
実はちょっと気に入ってる。


御幸くんと相部屋の子が唯ちゃんの彼氏で、こっそり部屋を交換した。
部屋に戻るなり、鍵をかけて壁に押しつけられながらキスをした。

身構えてなかった…深くて荒々しいキスに吐息が漏れる。

「浴衣がこんなに似合うなんて聞いねぇ…。みんなに見られたの悔しいわ。」

「ちょ…遠征中はしないって…言ってなかった?」

これは最後の抵抗。
こんなこと言ったって無駄だってわかってる。
キスしたらもう、離れられないのはわかってた。

「隣にも人いるから静かにな?」

人差し指を口の前で立てて、シーッとジェスチャーをする。
静かにできる自信がないのはどうしたらいいんだろう…。

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