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ダイヤのA 御幸一也

第52章 夏に向かって


「じゃ、お邪魔しました。」

御幸くんの部屋から出ていこうとしたら、さっきまでジーッと壁にもたれかかっていた奥村くんが動いた。


「こらこら、誰の彼女を追いかけようとしてんだ?」

私と奥村くんの間に入って背中に私を隠した。


「舞ちゃん、このあと、Tバッティング付き合って。」

「わかった。準備しとくね。」

御幸くんに背中を押されたから、そういうしかできなくて、ゲージとボールの準備ができた時に御幸くんがバットを持ってやってきた。

「大丈夫だった?」

「舞ちゃん、奥村にはマジ気をつけて。」

なんの話をしたのかは教えてくれなかったけど、ふたりきりになるなって強く言われた。

ボールケース3箱分を打って今日の自主練は終了。


決勝を7人で見に行った。

「え、御幸くん東京選抜に呼ばれてるの?」

電車の中で初めて聞いた。
みんな知ってたの?
その場にいた中で降谷くんと私だけ知らなかったみたい。

なんで言ってくれなかったんだろう。
言う時間がなかったはずないのに…。

「その話はまだ返事してねぇから舞ちゃんの前では言わないでってお願いしたのに、頼むよ礼ちゃん…。」

「黙ってたわけじゃねぇんだ。この大事な時期にチームを抜けていいものかって悩んでたんだ。」

「でも、悩むって事は、行きたいって思ってるんでしょ?東京選抜は主に稲実のメンバーだって聞いた。成宮くんのボール受けておいた方がいいんじゃないの?」

実を言うとそのバッテリー見てみたいと思ってた。
成宮くん相手にどう御幸くんがリードするのか興味はある。
でも監督は稲実の監督らしいから、わざわざ西地区でバッテリーは組ませないかな…。

1年との試合は今日だ。
ナベちゃんは試合に出せないって監督から言われたらしく、自分の意志でここにいるってはっきりと言った。
そう言い切れるのかっこよくて尊敬する。
野球に未練があった私とは大違いだ。

「東京選抜っていつ?」

「5月末。」

「そっか…行ってきなよ、きっといい経験できると思うよ。
御幸くんがいない間倉持くんがいい感じにまとめてくれるって」

「寂しがってるのは御幸だけみたいだな」

「ナベ…それを言うな。」

決めあぐねていたのって、まさか…。

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