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ダイヤのA 御幸一也

第51章 先輩の言葉


「なんだぁ?沢村達の練習見てたんじゃねぇのか?」

「うん、ちょっとね。」

倉庫の片付けをしに来たら、ボールケースを抱えた倉持くんがやってきた。


「そこに置いておいて、ここ掃いてから片付けるから。」


「何でもねぇって言われんのはわかってっけど、何かあったか?
俺に言えないことなら、御幸には相談しろよ?
一人で抱え込んでんじゃねぇぞ。」

「ありがと…。」

「ん。」

真新しいタオルを頭からかけてくれて、ポンポンと撫でていく。

「まだ使ってねぇやつだから、きれいだからな。」

喋ったら泣いちゃいそうだったから、タオルで顔を隠してうんうんと頷くのがやっとだった。


倉庫の隅っこでうずくまって声を押し殺して泣いた。


御幸くんとのこと、いつかは誰かに言われちゃうと覚悟はしてた。
気をつけてるつもりだったけど、浮ついてるって思われてたんだなぁって思うとやっぱり悲しい。
1年生は私が野球をやってたことも兄貴の事も知らないから、体力ない私が投げてるのが気にくわないのもわかる。



「うぉっ!何してんすか?!こんな所で…」

「舞先輩、泣いてる?」

東条くんと金丸くんが片付けに来て泣いてるのがバレた。

「御幸先輩呼んでくるか?」
「そうだね…。」

「ダメ!御幸くんには言わないで!お願い…」

タオルで顔を隠しながらそう叫んだ。

「あ、いや…でも…」
「お願い…泣き止むから…大丈夫だから…」

片付けを2人に任せちゃった…。
顔に水をかけて、赤くなった目元を冷やす。

ふぅーと一息ついたら、御幸くんに肩を叩かれた。

「お待たせ。ランニング行こうぜ」
「疲れてない?大丈夫?」
「約束したろ?」
「でも、やっぱりバッティングピッチャー断ろうって思ってるから…走る必要ないかな、って…。私が投げるくらいなら1年生に投げてもらった方がお互いの練習になるんじゃない?九鬼くんと浅田くんとか!」


「………誰かになんか言われた?今日打った奴らはみんな舞ちゃんの球褒めてたし、いい練習になったって言ってたから、それ以外のやつ…
2年、いや…1年だな。
奥村あたりに八つ当たりされたか?」

違うって否定したけど、バーカと言って頭を撫でられる。

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