第51章 先輩の言葉
「先輩をがっかりさせるような投球でしたか?」
「がっかりなんてしてないよ。ほんとに怪我が心配なんだ。
力んでると変な力がかかって、肩や肘に痛みが出ちゃう。」
俯いて、拳にギュッと力が入ってる。
「監督や御幸くんの言うことちゃんと聞いてれば、降谷くんはもっともっと成長できるよ。」
降谷くんの頭を御幸くんがしてくれるみたいにワシャワシャと撫でた。
「降谷、こんな所にいたのか。
マッサージは受けたか?」
小野くんがやってきて、降谷くんと話始めた。
キャッチャーの小野くんに後は任せて、私は室内練習練習場に戻る。
「えーーー、なんでこんなことになってんの?!」
奥村くんがプロテクターつけて、マスクまで被ってる。
「面白いことになってますよ、マネージャー!」
瀬戸くんも食い入るように見ている。
すごいなぁ。1年生が沢村くんのボールを一発でアジャストしてる。
ミットに収まる時のこの音、すごく好きだなぁ。
沢村くんがカットボール改を投げたけど、奥村くんはミットで触ることができなかった。
驚きと戸惑いが瀬戸くんからもする。
御幸くんと変わってナンバーズの練習が再開された。
沢村くんが狼少年というだけはある。
グルグルいって悔しさがにじみ出てる。
「奥村くんのキャッチングってすごく柔らかいね。」
「初見とはいえ取れなかった。キャッチング褒められても嬉しくないです。」
ありゃ…私も嫌われちゃったなぁ…。
瀬戸くんに怒られてる奥村くん。
彼の目つきは更に鋭くなった。
「夏前の大事なこの時期に、キャプテンが彼女のあなたと浮かれてるなんて信じられませんね。
どれだけコントロールがいいのか知りませんが、あれくらいの球威のボールなら、1年だって投げられます。
数少ない練習の場を体力のないマネージャーのあなたが奪わないでください。」
「光舟!それはお前が口出していい話じゃない。
キャプテンとマネージャーの問題だし、監督直々にマネージャーに頼んだって話だ。」
きっと誰かにそう思われてるんだろうなぁ…って事をズバズバと奥村くんに言われた。
「光舟、お前が悪いんだから、謝れ。」
「謝らない。」
「ごめんね。浮かれてるつもりはなかったけど、そう見えてたならごめんなさい。これから気をつける。」
御幸くん達はまだ投球練習をしていたけど、私はその場から離れた。
