第50章 自分の役割
「触らせんな」
はい、ごめんなさい。
奥村くんに握られていた手を御幸くんは力を込めて握った。
「1年に、奥村に妬くなんて呆れるだろ?」
そんなことないよ…。
御幸くんの独占欲はとても嬉しい。
「嫌な気持ちにさせてごめんね。」
「いや、これは俺のわがままみたいなもんだから…俺もごめん。」
手を触られた事は怒ってたけど、何を話したかは聞かれなかった。
沢村くんと奥村くんが揉めているのを目撃したのは食堂でのこと。
食べたあとの片付けをしているとき、浅田くんを励まそうと試みていた沢村くん。
それをうるさいって言い放った奥村くん。
浅田くんは食べるのに時間がかかるだけでちゃんと完食していると。
ちゃんと見てるんだなぁって感心した。
「目障りなんで消えてもらっていいですか、先輩。」
あちゃー、言っちゃったよ…
いくら沢村くん相手とはいえ、それは後輩としていかがなものか…。
沢村くんが言い返したけど、それを一刀両断した奥村くん。
「はいはい、2人ともそこまで!」
私が止めたタイミングと、浅田くんが完食したタイミングがほぼ一緒だった。
1年生に気を使わせるのはダメだよ、沢村くん。
そろそろ鵜久森と帝東の試合が終わってここでみんなビデオ見ると思うから、その準備をしようと思ってここにいて正解だったかな…。
御幸くんが見てるはずのスコアブックを取りに行くと沢村くん降谷くんか御幸くんと一緒にいた。
「あはははっ、あいつそんなこと言ったの?俺も現場で見たかったな。
舞ちゃんもいたの?」
「いたよ。どっちもどっち。」
「だってさ。お前も東先輩に暴言吐いてたじゃねぇか。因果応報、歴史は繰り返すってやつだな。」
そんなこともあったなぁ。もう遠い昔みたい。
「知らず知らずのうちにそいつの大事なもんに触れちまったんだろ?たぶん俺もだけど。」
沢村くんの喜怒哀楽が激しい。
御幸くんに怒られた時のこと思い出してるのかな?
明日試合だし、切り替えろって言った御幸くん。
「奥村のことは俺が預かる大会中なんだし、これ以上騒ぎを大きくするなよ。」
沢村くんと降谷くんが部屋から出ていってから、御幸くんをジーッ見つめる。
「なに?」