第50章 自分の役割
監督に頼まれて1年生の野球ノートを返しに1年生のフロアに来た。
こっちの校舎久しぶりだなぁ。
A組から順番に。
クラスが違うはずなのに、瀬戸くんが奥村くんのところに遊びに来てた。
なーんかこの光景よく見る図だなぁ。
あー、御幸くんと倉持くんの構図によく似てるんだ。
「矢代先輩ありがとうございます。」
「いえいえ。ねぇ、誰がどのクラスか教えてくれる?」
人懐っこい瀬戸くんに聞いてみた。まだ、把握できてないんだよなぁ…。
瀬戸くんが案内を買って出てくれて、残りの子たちに野球ノートを配りに行こうと思ったら、スッと奥村くんが立ちあがって、抱えていたノートを半分以上持ってくれた。
「ありがと」
「いえ。」
2人のおかげで、みんなに早く返すことが出来た。
「ありがとう、助かった。また練習でね。」
手を振って自分の教室に戻ろうとしたら、グンッと手を引っ張られた。
「おい、光舟!」
瀬戸くんの声で奥村くんが引っ張ったんだと理解した。
「なに?」
「あなたが思う御幸一也はどんな捕手ですか?」
「御幸くん?そうだなぁ…一言で言うと投手を輝かせる事ができる捕手かな。」
この答えって果たして奥村くんか求めていた答えなんだろうか。
「捕手として凄いところはたくさんあるけど、私が1番好きな所は、ボールの威力に負けないキャッチングかな。ミットが流れないの。
それに後には絶対逸らさない所とか。上げたら切りないよ。」
「先輩、それほとんどノロケじゃないすっか?」
「え"…そんなつもりなかったんだけど…。
なんか…ごめん…」
瀬戸くんに笑われて、急に恥ずかしくなってきた。
「光舟、そろそろその手離したほうがいいと思うぞ。御幸先輩、こっち見てる。」
え、まじか…。
自分のクラスの方を見ると、窓から満面の笑みを浮かべて御幸くんがこっちを見てた。
その笑顔が逆に怖い。
「俺も…あなたからそんなふうに褒めて貰える捕手になりたい。」
「野球IQ高いって御幸くん言ってたし、柔らかいキャッチングができてるって褒めてたよ。せっかく同じ部屋なんだし、盗めるものは全部盗んじゃえ。」
じゃぁねって今度こそ手を振って自分のことみたいに教室にもどった。
その帰り道、階段を上がった所で、御幸くんが待ち構えてた。
あーー、怒ってらっしゃる?