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ダイヤのA 御幸一也

第50章 自分の役割


ストップウォッチのタイムを見てニヤニヤしていると、ペットボトルが降ってきた。

「痛っ…」

「差し入れ、甘いやつ。疲れたろ?」

お礼を言って、ペットボトルに口をつけた。
「何嬉しそうな顔して。」

「見て!」

他校の強肩と名高いキャッチャーでも、2秒切るものは少ない。

「なんか自分のことみたいに嬉しい。御幸一也の送球すごいでしょ?って自慢したくなる。盗塁阻止率8割なんて聞いたことないもん」

「キャッチャーの成果だけじゃねぇよ。
やっぱり、バッテリー感の役割が大事になってくる。」


ピッチャーが牽制して、走りたいランナーの気を削ぐとか一塁に釘付けにしとく技術。
でも、やっぱりあの矢のように飛んでいくベースの真上にドンピシャな送球は大きな武器だと思う。
これがまた最強にかっこいい。

「待たせたな、帰ろっか。」
「待ってないよ、大丈夫。もうちょっとで終わるから、先にお風呂入っておいでよ。お湯抜かれちゃうよ?」

「遅くなるぞ?」

「へーき、へーき。試合まで時間ないし、これ仕上げときたいから。」

3年生になって更に練習量が増えた。
沢村くんたちの練習に付き合ったあとで、バット振ってる。
そんな頑張りを間近で見せられたら、私ももっとやらなきゃって思えてくる。

「出る頃には終わると思うからさ。」

まとめたデータをナベちゃんにチェックしてもらってるとお風呂上がりの御幸くんがやってきた。

「あー、髪、ちゃんと拭かなきゃ。雫垂れてる」
首にかかってるタオルでワシャワシャと御幸くんの髪を拭いた。


「ハハッ。御幸は俺らの前では頼れるキャプテンなのに、矢代の前では子供みたいだな。」

肩を揺らしながらナベちゃんは笑ってる。
失礼なって言うかと思ったのに、御幸くんは目を閉じて気持ちよさそうに、されるがままになってる。

「羨ましいだろ」

「はいはい」

後は好きにやってくれと言わんばかりにヒラヒラと手を振ってナベちゃんは部屋に帰っていった。

「頼れるキャプテンだって。秋は向いてないって弱音吐いてたのが嘘みたいだね。」

「こらこら、そこいじんないで」

照れ臭そうにそっぽを向いた。

「もういい加減忘れろ。」
「はーい」
帰る準備をして、部室の電気を消す。
手を繋いでグラウンドを後にした。

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