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ダイヤのA 御幸一也

第49章 3年生


御幸くんがボヤいていた。
「うちの部屋の1年が生意気でさ…なんかいつも睨まれてるんだよなぁ」

奥村くん…同じポジョンだからなのかな?
確かにグラウンドでもいつも御幸くんの事見てるよなぁ。
食べるのに苦労してていつも居残り組だけど、キチンと残さず食べてる。

「舞ちゃんの事もよく見てるけど、視線感じねぇの?」
「え、そう?」
「あーー、舞ちゃんは鈍感だったな」

揶揄うように笑う御幸くんに、苦笑いでしか返せなかった。

「まさかとは思うけど、奥村に惚れんなよ。」
「なんで?信用ないの?」
「そういうわけじゃねぇけど、なんか釘刺しとかねぇと危うい気がしてさ。」
「惚れっぽくないの知ってるでしょ?」
「よく惚れられてるのは知ってる」

後頭部に手が回って優しく引き寄せられた。
そんな心配しなくても大丈夫だよ。
御幸くんのことで頭がいっぱいだし。
他の人が入り込んでくる隙は全く無い。

「よし、充電完了。
ちょっくらバット振ってくるわ」

ランナーいないと打てないっていうのが御幸くんの代名詞みたいなもんだったのに、そのムラっ気もほとんどなくなってきた。
誰よりも一番バット降ってる気がする。
投手陣もまとめ上げて、スコアブックのチェックも欠かさないし、ちゃんと寝てるのかな?

寮まで送ってくれてるのは、変わらないけど、もういい加減申し訳なく思う。
睡眠時間、自分の時間を削ってまで一緒にいようとしてくれる。
これじゃ夏まで持たないよ。

その日は御幸くんが、沢村くんと降谷くんに捕まってる間にこっそり帰った。
なんで黙って帰るんだって、お怒りの電話がかかってきた。


「気にすんなって何度言えばわかる?俺が舞ちゃんと一緒にいてぇの。舞ちゃんとの時間が大事なんだ、相談相手にもなってくれるし、話してると頭の整理もできる。
舞ちゃんがいてくれなきゃダメなんだよ、俺…。」

だんだんと語尾がちっちゃくなってしまった…。
「御幸くん、ごめん。」

「拗ねてやる!」

ブツッと電話が切れた。
かけ直しても出てくれない。

完全にへそを曲げられてしまった…。

うーーーん、どうしようかな…。

朝練でも、つーーーんとしてるし、クラスでもいつもより増して近寄るなオーラ出てる。

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