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ダイヤのA 御幸一也

第48章 御幸の気持ち ⑦


しゃがみこんで頭を抱えてる俺の顔を舞ちゃんが心配そうにのぞき込んできた。

「見んなって…」

「えー、大丈夫?」

「矢代、そっとしといてやって。
嬉しくてニヤけてるの必死に隠そうとしてるだけだから。」

「え?なんで?」

無自覚かよ…。
「悶てる御幸はほっといて、練習の準備行くよ。時間限られてんだからさ。」

榎本に腕を引かれて舞ちゃんは、先に球場に向かった。


「御幸も苦労してるな。」

「うるせぇー」

まずは明日の試合勝たなきゃ巨摩大とはやれねぇんだ。
チームの為に必死にデータ取ってきてくれたみんなの為にもひとつでも多く勝つ。





「初球カーブは狙ってたの?」
「狙うだろ。ドンピシャで気持ちよかった。」
「12安打ノーエラー。7-3で3回戦進出!凄いね!」

下位打線で点も取れた。


「あの成宮鳴が、稲実が…勝てなかった巨摩大藤巻。
いよいよだね。
成宮くんなんか言ってた?」

「んー、負けるなって一言メッセージ来てたよ。
そっちは?薬師の真田。順調に勝ち上がってんじゃん。」

「俊平は自分のことより、轟親子のこと言ってた。
この親子すげぇだろって、轟くんが活躍する度に自分のことみたいに喜んでるの。」

「ふーん。聞くんじゃなかった。連絡来てんのかどうかカマかけたのに。」

しまったって顔してんじゃねぇよ。
連絡くらいしたっていい。
そこは気にしない。

ただ、薬師が勝つとやっぱり嬉しそうな顔してる。
テレビをつけて真田が投げていると、手に力が篭ってる。
応援してんだなって伝わってくる。

舞ちゃんは誰と付き合ってるのかって聞きたくなってくる。

練習グラウンドで、薬師の次だった俺達。
真田と会話してる舞ちゃんを、あいつから引き離したかった。
嫉妬心ダダ漏れなのを倉持に笑われた。

気づいてないのは舞ちゃんだけ。
俺が睨みつけてるのを真田にも悟られて、舞ちゃんの背中を押して「もう行けよ」と口元が動く。
気遣われてるのが余計に腹立つ。

付き合いの長さはどうしたって負けるが今一緒にいるのは俺だ。
彼女が好きだって言ってくれてるのは俺だ。

嫉妬心をかき消して、練習に集中した。

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