第43章 良薬口に苦し
騒ぎを聞きつけたのか御幸くんが怒鳴り込んで来た。
咳き込んでるし、熱もまだあるはずなのに。
沢村くんの作ってるものを見て青ざめてる。
「舞ちゃん、止めて。あいつを止めて。
腹こわして余計に寝込みそう。」
「うん。あれは怖いね。
でも、もうできたみたいだよ。」
私が止める間もなく、御幸くんが羽交い締めにされて謎の液体を飲まされた。
「だ、大丈夫??」
「ひどい目にあった。」
「口直しになるかわかんないけど、お粥作ってきたんだけど、食べられそう?」
食う。とのっそり起きあがってきて、アーンと口を開けた。
食べさせろってことね。
さっき散々な目にあったし、甘やかしてあげよう。
一口すくって口元に持っていく。
「美味いとは思うんだけど、さっきの味に全部かき消されてる。」
「強烈だったもんね。」
にんにく、生姜はまだわかる。
スイカズラとかたんぽぽの根っことかどこで手に入れてきたんだろう。
「ごちそうさまでした。」
「夕食は何食べたい?って食欲ないか…」
「さっきのやつのじゃなかったら、何でもいい。」
よっぽどまずかったんだなぁ…。
うどんにでもしてもらおう。
御幸くんが眠れるまでそばにいようと思ったけど、いつの間にか私も眠ってて、気づいたら御幸くんの抱き枕状態になってた。
おでこを触ってみるとさっきよりは熱が下がってるみたい。
まさか、沢村くんの特効薬が効いたんじゃ…。
起こさないように抜け出して、寮母さんにうどんを作ってくれるようにお願いした。
夕食を運ぶと御幸くんは起きていて、置いていった事に拗ねてしまう。
「熱は?」
「悔しいけど、下がってる…と思う。」
前髪をペロンと捲ったから、おでこを近づけてみた。
ホントだ。熱下がってるみたい。
「良かった。安心した。」
「舞ちゃんのお粥のおかげって事で…。
沢村のはマジで悔しい!」
翌日、練習に復帰した御幸くんと寝込んだ私。
ちゃっかりもらってしまったみたい。
沢村くんが、私にもとニコニコ笑顔で特効薬を作って持ってきてくれたらしいけど、管理人さんによって破棄されたらしい。
大丈夫かー?と連絡をくれた御幸くんと電話で喋っていたら、風邪が移った経緯がわかった。
「寝てる舞ちゃんにキスしたから、移しちゃった」
って、あっけらかんと言われる。