第43章 良薬口に苦し
御幸くんが迎えに来てくれて、青心寮に戻る。
新年のあいさつをした。
何人かもう帰ってきていて、地元のお土産をもらった。
練習は明日から。
冬合宿の疲れは取れたみたいで安心した。
このまま女子寮に帰ってもみんな帰省してて誰もいないもんなぁ。
もらったお土産を抱えてどうしようかと考えていると、寮の2階から御幸くんが私を呼んだ。
「掃除できたから、おいでよ。
暇なんだろ?」
「行く。」
5号室から倉持くんが出てきて、一緒に御幸くんの部屋に遊びに来た。
「休みの間なにしてたの?」
「軽く走ったり、ゴロゴロしたり。地元の奴らと会ったり、かな。」
みんなそんな感じだよね。休みでも自然とバット振っちゃうんだろうな。
寒い中の練習はそれはそれで厳しい。
全体練習は早めに終るけど、その後の自主練は長い。
御幸くんは降谷くんと沢村くんに連日遅くまで捕まってるようだった。
「あれ?御幸くんは?」
朝、寮に行くといつもならもうご飯食べてる時間なのに御幸くんはいなかった。
「風邪引いて寝込んでる。」
え?風邪?!
お風呂が沸いてなくて裸で野球用語しりとりをしていたみたい。
そりゃ風邪引くよなぁ。
一緒に裸でいたはずの沢村くんと降谷くんはピンピンしてる。
不思議だ。
御幸くんの部屋を覗いてみると、ベットで大人しく眠ってた。
ソッとおでこに手を当ててみると、結構熱が高い。
汗かいてるし、拭いておかないと。
ハンカチで拭こうとしたら、パチッと目が開いた。
「舞ちゃんか…」
ぼーっとして、力ないし鼻声だし。
これは結構ひどいんじゃないかな?
「何か食べられそう?」
「いらない。
それよりそばにいてよ。」
弱ってるなぁ…。
何か食べなきゃ薬も飲めないし。
ゴネる御幸くんを言いかせて、厨房に向かった。
そこでは沢村くんがなにか作ってた。
降谷くんもやってきて何してるの?って聞いていた。
お米を取り出して、お粥を作ろうとしている私。
聞こえてくる会話で御幸くんのために風邪の特効薬を作ろうとしているのがわかった。
「先輩はなにしてるんですか?」
「お粥を作ろうと思って。」
沢村くんはみかんの皮を焦がしたものを刻んでいて、見るからに怪しそう。
御幸くんのために作ってるって言ってたけど、どうするんだろう。
「こらー沢村!」