第4章 一年生 ④
御幸くんが庇ってくれた。
あんなにつーーーんてしてたのに。
抱きしめるみたいに、覆い被さってくれて、本当に申し訳ない。
「ごめんね、本当にごめん。」
「怪我してねぇなら、それでいい。」
なかなか腕を離してくれなくて、軽く押し返してみた。
そしたら、それ以上の力でギュッとされる。
「なんか、言われた?」
「え?」
「なんか、巻き込んだかなって。もっと言い方があったかもしんねぇって反省した。
でも、言いたいことあんなら自分で直接言ってこいって思わねぇ?」
御幸くんの腕の中にいるからか、耳元で彼の声が聞こえる。
「ご、ごめん…頭、働かない…私の経験のなさからはキャパオーバーです。わかんない。」
「ハハッ、やっぱ舞ちゃん、おもしれー。何言われたかわかんねぇけど、舞ちゃんはそのままでいてよ。」
「ますますわかんない…」
「いーよ、それで。」
「それともういい加減離してください。近いから!」
「抱き心地が良くて、つい…ごめんな」
「そういうのいらない」
両手で御幸くんの胸板を押し返した。
あれ?なんか…
「どした?」
手のひらをマジマジと見ていると御幸くんが不思議そうにのぞき込んできた。
「なんかたくましくなった?」
「そりゃ毎日丼3杯も食ってりゃ、たくましくもなるわ
今はなんとか食えるようになったけど、最初はきつかった」
ノリくんも倉持くんも、最初はなかなか食べられなかったって言ってたなぁ。
「舞ちゃんももっと食え。弁当なんかあれで足りるのかってくらいちっちぇーじゃん。」
「十分たりてるよ。」
散らばったボールを片付けている時、不意に御幸くんが話しかけてきた。
「舞ちゃんはさ、好きなやついねーの?」
「野球って答えたら笑う?」
御幸くんはお腹を抱えて笑いだした。
もう、と膨れていると笑い好きで流れた涙を拭いていた。
「予想通り!すげぇな、ブレねぇ」
「器用じゃないし、一つのことしかできないの。俺と野球どっちが大事なの?とか言われ続けてきたから、そんな悲しい質問、もういい。」
「彼氏いた事あるんだ、へぇー、そっか。」
ちょっとだけ、そっかの言い方が気になる。