第4章 一年生 ④
「中学の時…少しの期間だけ。兄貴はまだ早いって怒ってた。でも、その一言言われて一気に冷めちゃった。元々そんなに好きじゃなかったのかもしれない…悪いことしたなぁ…って。」
「女々しいやつだな。」
「不安にさせちゃった私も悪いんだよね。毎日毎日選手でもないのにシニアに行ってたから。
私、恋愛には向いてないと思う。不適合者なんだよ」
「いいんじゃない?こんなに夢中になれるものなんてそうそう出会わないよ。」
棚にもたれかかりながら、な?とニカッて笑った。
「御幸くんは?」
「…………。俺も舞ちゃんと、一緒。
野球が恋人。俺も不適合者かもしんないなぁ。」
「友達いないもんね」
「うるせー。仲間がいれば問題なし」
私も部活の仲間しか、心許せる人いないかもしんないし。
お互い友達できるように頑張ろうねって笑いあった。
「追試は免れたーーー!これで心置きなく練習できる!」
「おぉ!良かったね!おめでとう
御幸くんは?」
「セーフ」
「さすが!」
みんな赤点は免れたみたい。
テストが終われば、地獄の冬合宿。
夏よりある意味、キツイらしい。
年末ギリギリまでやるから。
それをやりきれば、年末年始のお休み。
3日間のお休みは貴重だ。
「お疲れ様!」
「きつかったなぁ…倉持は実家帰えるんだろ?何やんの?」
「寝る!ただひたすら寝る。」
「友達いねぇんだ。」
「お前ほどじゃねぇよ。」
御幸くんと倉持くんのこのやり取りはもう見慣れた光景。
「舞ちゃんは?」
「両親海外旅行行ってるから、気ままに一人で過ごすよ」
「まじ?一人なの?!」
「父がリフレッシュ休暇だって。永年勤続表彰されたから、長期の休みなんだって。よくわかんないけど。」
「じゃ、初詣いかね?倉持も誘ってやんよ。」
クワッと睨みをきかせて怒鳴った
「お前らは東京。俺は千葉。めんどくせぇからふたりで行ってこい。」
「だってさ。舞ちゃん、一緒に行かね?」
「家族と行かないの?」
せっかく寮から自宅に帰れたのに、家族でゆっくりしたらいいのに。
寂しがってるんじゃないかな?