第39章 御幸の気持ち ⑤
自分で巻き直したというテーピングと包帯は、しっくりきてないみたいで、急いで工藤と東尾に来てもらった。
「こりゃだいぶ腫れてるな…。内出血もひどい。」
「骨折してなかったのが奇跡だな」
「すごーい。痛くない。工藤くんも東尾くんも練習抜けてきてもらってごめんね。」
「それは全然いいけど。」
「心配症のキャプテンを引取ってこいって倉持がうるさかったしな。」
まだ制服の俺…。
立場ねぇな…。
「野球部の事は大丈夫だからしっかり直せよ。」
「矢代が元気ねぇと、御幸がヤバイしな。おだいじに。」
二人に引きずられるようにしてグラウンドに行った。
翌日から学校には出てこられるようになったけど、かなり不便そうだ。
そんな足でいつもみたいに弁当作ってきてくれるから、頭が上がらない。
「手抜きになっちゃった」
ごめんねと、申し訳なさそうに謝る舞ちゃんの頭を優しく撫でる。
「作ってきてくれるだけで本当にありがたいんだ。こんな時くらい無理すんなよ…。」
「御幸くん美味しそうに食べてくれるから。その顔見たくて…」
決めた!
足が治るまでとことん甘やかす。
俺にできることはそれくらいしかない。
1週間くらいすると腫れもだいぶ引いてきて松葉杖は取れた。
ひょこひょこ歩きは変わらないけど、グラウンドにも出てこれるようになった。
「動き回ってるの見つけたらすぐ連れて帰るからな。」
「はーい。各ブロックの試合のスコア付けと配球表やっとくよ。どこが選抜に選ばれてもいいように。」
「言ってるそばから無理すんなよ…」
座ってるから大丈夫でーす。と明るく振る舞ってる舞ちゃん。
本人は気づいてないかもしれないけど、後ろから話しかけるとビクつくようになった。
やっぱ誰かに背中押されたのか?
その問題は片付かないまま冬合宿へと入った。
6時にランニングスタート。
サーキットトレーニング、素振り、朝食を挟んで、内外野ノック、バッティング。
日が落ちてからはランメニュー。
これが地獄。
夕食後はウエイト、ロングT
23時に就寝。
25日には部のクリスマスパーティー。
マネージャー達がケーキを焼いてくれた。
「まぁまぁ美味いな」
「まぁまぁかよ」