第30章 鵜久森戦
勝ってるのは青道なのに…
鵜久森は観客を味方につけた。
鵜久森が何か仕掛けてくるたびにスタンドが盛り上がる。
運も味方につけて、ジワジワと迫ってくる。
止まらない鵜久森打線。
でも、監督は前進守備を支持した。
強気だ…。ベンチが強気なら大丈夫。
このピンチも切り抜けられる。
でも、鵜久森の勢いは止まらない。
ついに1点差にまで迫られてきた。
沢村くんの括にパワーをもらったのか、黙らせたかったのかはわからないけど、その後のバッターを三振に打ち取った。
活気を取り戻した、青道ベンチとスタンド。
1点でも多く。
御幸くん!
フェンス手前まで飛んだ抜けてもおかしくないあたりだったのに…。
ノッてるチームはこれをアウトにしちゃうんだ。
ラストイニング。
沢村くんが気迫で投げきった。
なんとか逃げ切る事ができて、本当に良かった。
夜の寮の食堂では、沢村くんが嬉しそうにはしゃいでいて、それを倉持くんがヘッドロックで締めていた。
最後のカットボールの話題になって、打者に気持ち持っていかれていたから、無理矢理正そうとせずにぶつけさせたと語った御幸くん。
コースも角度もここしかないってボールだったらしい。
「舞ちゃん?なにその眼差し…」
「尊敬の眼差しです。
そのサイン出す御幸くんが凄すぎる。」
「あれは沢村を褒めてやって」
よし、後でジュース差し入れしよう!
今の今までいい雰囲気だったのに、ゾノくんと御幸くんがかなりよそよそしい。
許したわけやないと言い放つゾノくん。
御幸くんも言い返しちゃった…
試合前よりひどくなってるかも…。
御幸くんもゾノくんも頑固者め。
沢村くんに差し入れをしようと自販機にいくと工藤くんに呼び止められた。
「矢代の言ったとおり、降谷、やっぱり足やってたみたい。」
「え?大丈夫なの?」
「多分捻挫だろうけど、明日になったら、腫れてくるかもしれないよな。
今から部長に言ってくるよ。」
「降谷くんて何号室だっけ?」
アイシングの氷嚢とテーピングとその他諸々を持って降谷くんの部屋を訪ねた。
テーピングと包帯で圧迫してアイシングをすること、足を高くあげて寝ることを伝えて降谷くんの部屋を出た。