第30章 鵜久森戦
「降谷、どうだった?」
「工藤くんとおなじ意見かな。腫れは抑えられると思う。痛み長引かなきゃいいんだけどな…」
「工藤から聞いたけど、あいつが怪我した直後からおかしいって言ってたんだって?」
「降谷くんが打たせて取るなんてピッチングするとは思わなくて、どっか痛いところあるのかも…って思っただけだよ。」
身体の傾きだけでも見破った工藤くんもすごいな。
「マネージャー、勝ったんだってね。おめでとう」
「あと3つだな。」
「亮介先輩、楠木先輩。こんにちは」
最後危なかったとか、ストッパーが沢村くんだったこととか。
昨日の試合について話していた。
「試合も観に行くからな」
「お待ちしております。」
昼休み早々に出ていった御幸くん。
私も飲み物を買おうと自販機に向かった。
哲先輩と御幸くんがベンチに座ってるのが見えた。
試合の報告でもしてるのかな?2人にも買っとこうかな。
飲み物を抱えていた2人の所に向かった。
「じゃぁ、辞めるのか?キャプテン…大事なのは本人の意志なんだろ?」
あ、まずい…これ本気の相談だ。
立ち聞きしちゃいけない…。
その場をゆっくり立ち去ろうとした。物音を立てないように。
「お前がキャプテンになればチームは強くなる。俺はそう思ったからお前をキャプテンに押した。
大したことは言ってやれないが話なら聞いてやる。いつでも来い。
なぁ、マネージャー?」
ひぇ…バレてた…。
振り返った御幸くんと目が合う。
いや、なんとも気まずい…
「ごめんなさい。立ち聞きするつもりはなくて…一緒にいるの見かけたのでこれ飲んでもらおうかなって」
2人に買ってきた飲み物を渡した。
「マネージャーも御幸の力になってやってくれ。」
「精進します!」
じゃぁなと哲先輩は帰っていった。
「ごめん、聞いちゃった…」
「いいよ。これくれたし。戻ろうか。」
御幸くんの表情はとても柔らかくなっていた。
さすが哲先輩だなぁ。
「御幸、矢代、ちょっとこれ見てほしいんだけど。」
ナベちゃんがノートを持って教室で待っててくれた。
なんだかナベちゃんイキイキしてきた?
大谷戦へのミーティングの時も、堂々と前で喋っている。
暗い表情よりそっちのほうがずっといい。