第29章 七森学園戦
「みんな悩んでる。」
「ゾノも言ってたけど、御幸にはスタンドにいる人の気持ちはわかんないよ。」
「じゃぁ…ナベちゃんは御幸くんの気持ちちゃんとわかってるの?」
「矢代…」
「わかってほしいならちゃんと話さなきゃ。御幸くんだって、悩んでないわけないよ。このチームのキャプテンは重い…。
言い争ったっていいじゃん。3年の先輩たちもよくつかみ合ってたし。」
「ハハッ…御幸が君のこと信頼してる理由がよくわかったよ。」
「どーいうこと?」
「はっきり言ってもらえてすっきりした。機会見て話してみるよ。ちゃんと。
御幸もスネてるかもしれないから、行ってやって?」
おやすみと手を振って、食堂に入った。
御幸くんにお隣りいいですかー?と少し軽めに声をかける。
返事はない…か。
口…への字にしちゃってむくれてる?
とりあえずワシャワシャと御幸くんの頭を撫で回す。
「舞ちゃん…ちょっ…やめろって」
「いいじゃん、たまには…いつも好き放題撫でてるのは御幸くんだよね?」
「聞いてた?」
「途中からだけどね。大丈夫だよ、御幸くん。」
いつもより小さく見えてしまう御幸くんを抱きしめた。
「何この包容力。」
「今だけ…。明日鵜久森戦なんだから。切り替えてね。」
「あー、情けねえ…」
「いいよ、そういう時があっても。」
明日に引きずらなければいいけど。
鵜久森はチームの団結力がすごかったから。
なにあんなに結束力をあげるんだろう…。
腕の中でモゾモゾと御幸くんが動いたから、腕を緩めて今度こそ隣に座った。
「俺…舞ちゃんがいなかったらどうなってたんだろうな…」
「ん?」
「1年の時からずっと支えてもらってばっかで…」
「私別に何もしてない…」
「こうやってそばにいてくれるだけで、俺の力になってる。
自分を見失わないで、冷静にいられる。」
「御幸くんの気持ちが強いんだよ。」
「わかってねぇな…」
わかんないよ、ちゃんと確信に触れてくれなきゃ。
大事なところはいつも濁すんだもん。
倉持くんに鈍感女って言われた私だよ?
言葉にしてくれなきゃわかんない。