第3章 一年生 ③
ん、と手を出してきて鍵と一言。
「送ってく」
「やだ、一人で帰る。御幸くんなんか知らない…」
子供っぽいとは思う。
けど、素直に甘えたくなかった。
「だめー、拒否権ありません。」
「やだ、ついてこないで!」
ぎゃあぎゃあ言いながら、学校を出る。
走りに行ってたのか、倉持くんと遭遇した。
「おっ、やっと夫婦復活か?お前ら一緒にいねぇと不便だったからな
これからは楽になるわ」
「夫婦じゃないもん!」
そう、返したのは私だけだった。
「矢代はさ、好きなポジションとかあんの?
やっぱりやってたし、ピッチャー?」
同じ一年の子とTバッティングしてる時に、ふと投げかけられた質問。
「んーーー、難しいけど、強いてゆうならキャッチャーかな。」
「ほぉーやっぱり、目の付け所が他の女子とは、違うな。
キャッチャー好きな女の子ってレア。」
そうかな?
要だと言われるポジションだし、私は好きだけどなぁ
「かなり、マニアックな話してもいい?」
「どうぞ、どうぞ」
「あのね、キャッチャーマスクをプレーの最中に外す瞬間がたまらなく好き。
あとね、キャッチャーマスクをポケットに刺して、カチャカチャ音を鳴らしてる所も。」
「確かにマニアックな話だな」
「ちなみに、4-6-3のダブルプレーが好きです。」
「6-4-3はじゃ駄目な理由は?」
「えー、なんだろう。ボールの動きとか?
外野手なら、ゴロ制のヒットからのバックホーム。」
「かなり野球好きじゃん。」
「大好きだよ。野球。まだ未だに未練あるもん。」
やっぱり私もやりたかった。
「舞ちゃん、俺にもT投げて。」
「あ、うん。
インコース?アウトコース?」
「インコースでお願い。キャッチャー好きなの以外だな。」
いつから聞いてたのか、御幸くんにも以外だといわれた。
「そう?リトルの時に、名前も知らない男の子だけど、この子のプレーがなんかとっても目に焼き付いてて、顔とかうる覚えなんだけどね。
楽しそうにプレーしてたのが印象的だったなぁ。どことなく、御幸くんみたいな感じ。その子のプレー見てからキャッチャーが好きだよ。」