第3章 一年生 ③
ねぇ、なんで?
話さなくなったと思ったら
こういう時に現れるの…
なんで助けてくれたの?
嫌いならほっといてくれたら良かったのに…
ポンポンと頭を撫でていた御幸くんの手を振り払った。
「俺まで嫌われちゃったか…」
そんな残念そうな声色で言わないでよ。
避けてきたのは、御幸くんでしょ?
いつまでも、地べたに座り込んでる私を御幸くんは立たせてくれた。
「寒くなってきたんだから、ほら立って。」
優しくしないで…。
「舞ちゃん?」
黙りこくってる私に御幸くんは、顔をのぞき込んできた
「やだ、見ないで…もう、ほっといてよ」
「え、ちょっと…なんで泣いてんの?
そんな怖かった?!え?どっか痛いか?」
キャッチャーマスクをしてる時とは、別人と思うほどに、いきなり慌てだした。
「優しくしたり、突き放したり…
御幸くんがわかんない…」
「今泣いてる理由はそれ?」
答えないでいると、ふーんとやけに嬉しそうなトーンで意味深に笑った。
「御幸くんて、すっごく意地悪だね。」
涙でぐちゃぐちゃな私の顔を、御幸くんはジャージの袖口で拭いてくれた。
ちょっと嬉しそうなのは、なんなの?
「あーもう、泣きやんで。ごめん、悪かった。」
「止められるなら止めてる。」
なんで急に、そっけなくなったのか、全然心当たりなかったから。
なんかした?って聞いたのに、なんにも答えてくれなかったのは、御幸くん。
「俺があんな態度取ってどう思った?」
「嫌われたのかって不安だった。なんでだろうって」
「そっか、そっか
もっと俺のことで悩めよ」
「はぁ?!なにそれ…ますますわかんないっ!」
「おっ、泣きやんだな
舞ちゃんには涙は似合わないって」
頭をぐちゃぐちゃに撫で回して御幸くんは笑ってた。
「それから、こんな時間まで何してんの?何度も言ったぞ。
女の子なんだから、一人で帰るの危ない。
マネージャーはみんな帰ってるんだから、舞ちゃんも俺らに付き合うことねぇのに」
「好きだから…
野球が好きだから、グラウンドにいたいの」
「俺らに負けず劣らずの野球バカだな」
「そんなの言われなくてもわかってるよ」