第27章 秋季大会直前
「わかった。これからは一人で行かせたりしない。約束する。」
舞ちゃん行こうと手を引かれた。
「俊平、ありがとう!気をつけて帰ってね。」
「おぅ!またな!あのこともちゃんと考えてくれよ」
ヒラヒラと後ろ向きに手を振る俊平。
ピタッて御幸くんが歩くのをやめた。
「御幸くん…あの…怒ってる?」
「怒ってねぇよ…」
じゃぁなんで、何も言ってくれないの?
握られた手のひらは強く握りしめられてて…少し痛い。
少しの沈黙だったかもしれないけど、私には長く感じた。
「一人で行かせてマジで悪かった。」
「謝らないでよ…。それに全然大したことないんだからさ。
俊平がちょっと大げさに言ってるだけ。」
「中学生の女の子が、大人の男に付け回されたんだろ?
大したことないなんて、そんなはずねぇだろ…」
「人よりちょっと怖がりなだけだって。」
御幸くんの顔が怖い…。そして何か考え込んでる。
「舞ちゃんの事毎日送ってくよ。これからどんどん日が暮れるの早くなるから。」
悪いからいいと言おうと思ったら、悪いからとかはなしなと先手を打たれた。
「断るなら、全体練習が終わったら舞ちゃんは帰るつうか、強制的に帰らせるからな。」
「えー、それはヤダ…」
「決まりだ。送っていくから。」
御幸くんは一歩も引いてくれないみたいだ。
自主練参加できなくなるのは嫌だし…。
「なぁ、舞ちゃんが彼氏作んないのってそれが原因?」
「違うと思う…。男の人が苦手ってわけじゃないし、その事があってから1ヶ月もしないうちに兄貴が…ああなっちゃったから…」
そこまで喋った時、御幸くんの腕に包まれた。
「もう、いいよ。辛いこと話さなくていい。思い出させてごめん。」
御幸くんが上手に気を遣ってくれたから、辛くないよ。
あの時の私は、青道に入学して野球部のマネージャーになるっていう目標が支えになってた。
兄貴が憧れた青道と御幸くんに会いたかったんだと思う。
偵察してきた内容を御幸くんや倉持くんたち主力に見てもらう。
「向井くん、おもしろいこと言ってたんだ。
奥隅って。これって二次元じゃなくて三次元で見えてるってことだよね。」
「こりゃまた厄介だな…コントロールのいいやつにしか言えねぇセリフだ」
沢村くんに見習えといった2年生たち。