第27章 秋季大会直前
「雨だねぇ…」
「雨の日は雨の日の戦い方がある。大丈夫さ。」
覚悟を決めた男は強いな。
さっきの監督の言葉はまるで別れの言葉みたいだった。
本当にやめるつもりなんだ…。
片岡監督だから、みんなここまでやってこれてると思う。
選手の成長の事をなりよりも第一に考えてくれてる監督。
だから、引退試合でみんな少なからずショックを受けてたんだ。
「不安?」
「ううん、違うの。監督の事考えてた。」
「辞めさせねぇって言っただろ?監督を甲子園へ…その思いで今チームは纏まってるから、心配無用。」
「そうだよね、ごめん。
御幸くん、お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
監督に渡してほしい。
監督のことを聞いた日、御幸くんの言葉を聞いて作らずにはいられなかった。お守り。
「大田部長も、高島先生も作ったんだ。御幸くんから渡してくれないかな?」
「まだ監督室にいると思うぜ。今から行くか?舞ちゃんから直接渡したほうが監督も喜ぶと思うけど。」
「なんか恥ずかしくて…だめ?お願い…」
しょうがねぇなと御幸くんは3つのお守りを受け取って監督室に向かってくれた。
随分長いこと話し込んでるな…
もしかして、あのお守りのせいで御幸くん怒られてたりする?
くだらんとか言われちゃったり?
あー、余計なことしたかな…。
「こら、百面相!」
「わっ、お、おかえり。」
「監督も、部長達も喜んでたよ。部長なんてガチ泣き。監督も言葉失ってたな。」
「それはいい意味で?」
当たり前だろ?とカラカラ笑った。
「さて、帰ろうか。」
私の荷物をサッと持った御幸くん。
「ちょっとちょっと何さり気なく持ってくれちゃってるの?
荷物は自分で持つよ。」
「重いだろ?なにが入ってんのか知らねぇけど。」
いやいや、選手にそんなことさせるわけにはいかないって!
持つ!返して!の攻防戦を繰り広げている間にあっという間に寮の前。
「ほんと、毎日毎日ありがとう。」
「気にすんな。明日、寒くなりそうだから、長袖もってこいよ。」
御幸くんはお母さんかな…。
帰り際いつも一言二言、風邪引くなよとか、鍵ちゃんとかけろよとかそう言われる。
今日は何言われるんだろうって密かな楽しみだったりするのは、御幸くんにはナイショ。